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第2のステイゴールド型種牡馬・スクリーンヒーロー/アルゼンチン共和国杯

  • 2015年11月09日(月) 18時00分


ゴールドシップに似たムードもあるゴールドアクター

 2歳戦の特別、重賞が増えている。また、このレースの直後に行われた「みやこS」は、4歳牡馬ロワジャルダン=4歳牡馬カゼノコの決着だった。古馬の出世レース「アルゼンチン共和国杯」を勝ったのは、4歳牡馬ゴールドアクター。3着に押し上げてきたのは3歳牡馬レーヴミストラル。秋が深まるとともに世代交代の波は大きくなっている。

 4歳ゴールドアクターの父スクリーンヒーローは、このところすっかり埋もれかけていたメジロボサツの子孫から、安田記念を抜けだした大器モーリス(祖母メジロモントレー)を送り、同じく最近は活躍馬の少なかったロゼッタのファミリーからシンザン記念のグァンチャーレを出現させ、さらには歴史の中に埋没しそうな牝系からこのゴールドアクターを登場させるなど、なにやら第2のステイゴールド型の種牡馬として成功しつつある。

 ゴールドアクターの牝系ファミリーは、必ずしも現代の著名牝系ではない。母ヘイロンシン(父キョウワアリシバ)は、障害2勝馬。祖母ハッピーヒエン(父マナード)は未勝利馬。3代母ブゼンフブキ(父セダン)も1勝馬にすぎない。だが、4代母トサクイン(父トサミドリ)は、中京3歳Sなど5勝、障害戦11勝の活躍馬であり、その半兄には中央競馬で鳴尾記念など9勝のあと、公営に転じて東京大賞典などを勝ったゴウカイオー(父ヒンドスタン)がいた。

 3代母ブゼンフブキの半兄には神戸新聞杯を勝ったホウシュウリッチ(父ダイコーター)がいる。ホウシュウリッチといっても近年のファンが知る由もないが、ハイセイコー、タケホープなどがいた黄金期1970年生まれの1頭であり、ホウシュウリッチは引退された瀬戸口調教師で2勝したあと、主戦となったのは来春で引退される騎手時代の松田博資調教師である。

 松田博資=ホウシュウリッチのコンビは、1973年の秋、1番人気で神戸新聞杯を3馬身で圧勝している。当時は菊花賞直前トライアルの京都新聞聞杯は、トーヨーチカラ、ハイセイコーと接戦の4着。タケホープ=ハイセイコーの本番の菊花賞でも2番人気に支持されている(12着)。ホウシュウリッチは5歳時からは障害入りし、平地時代と同じく松田博資騎手とのコンビで5勝もした活躍馬だった。

 そういうちょっと歴史のなかに消えてしまいそうだった牝系から、菊花賞を3着し、その能力が本物であることを証明するように、4歳秋になり父スクリーンヒーローと同じようにアルゼンチン共和国杯2500mを快勝したのがゴールドアクター。必ずしも現代の著名牝系出身ではなく、母方に大きな距離不安を感じさせながらも菊花賞で快走し、重馬場の2500mを勝ち切るところなど、ゴールドシップ(父ステイゴールド)に似たムードもある。やっぱり、父スクリーンヒーローは、「弱きを助け、強きをくじく」第2のステイゴールド型種牡馬なのである。
重馬場になったため、レースは予想された以上の超スローで展開。伏兵スズカデヴィアスの先導したペースは前後半の1200m「1分16秒1-(6秒3)-1分11秒6」=2分34秒0。

 2番手で進めたメイショウカドマツ(父ダイワメジャー)にとっては非常に楽な流れとなり、直線抜け出したあたりでは勝機濃厚と思えた。同馬も決して長丁場向きとは思えない血統背景ながら、これで東京では2000m以上だけに出走し、「2000m1着、3400mのダイヤモンドS3着(0秒4差)、2400m1着、2500mの目黒記念4着(0秒3差)、そして2500mのAR共和国杯2着(0秒0差)」。他のコースでは案外の失速が多いのに、こと東京では自分のリズムでのびのび走れるからだろう、レース内容が一変する不思議な馬である。

 スクリーンヒーローで08年のAR共和国杯を勝った蛯名正義騎手は、寸前まで勝ったと思えたが、スクリーンヒーロー産駒のゴールドアクターに、最後の最後に差し切られてしまった。14キロ増の538キロでも、余裕残りというより迫力あふれるフットワークの方がはるかに光り、完成期に達したと思えるが、もう、今季は東京コースの長丁場は「ジャパンC」しかない。次のレースは他場となりそうなだけにちょっと評価微妙である。

 ジャパンCというなら、勝ったゴールドアクターは当然、父スクリーンヒーローに続いてジャパンCを展望することになる。GII重賞を制して今年3勝目となったが、ここまでのベースとなる総獲得賞金そのものが少ない。ジャパンC出走が可能かどうかは、現時点ではちょっと不明。招待に応じる外国馬の頭数が昨年(3頭)のように少ない場合は、出走できる可能性が高くなるが、今年は日本馬のレベルがあまり高くないことは世界に知れ渡っているから、外国馬の枠は埋まるのではないか、と考えられている。

 3着レーヴミストラル(父キングカメハメハ)は、切れ味を生かしたいタイプ。ただ1頭だけ上がり33秒台の脚を使って最後に3着に浮上したが、道中はコースロスを防がなければならず、直線は早く外に出したかったが、これもあまりスムーズではなく、最初から馬場がこたえているようだった。良馬場で前進だろう。

 2番人気のプロモントーリオ(父ゴールドヘイロー)、5番人気のレコンダイト(父ハーツクライ)の2頭も馬場が堪えたのか、今回はいいところなしだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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