スマートフォン版へ

欧州血統が走るのは妄想か?

  • 2015年11月25日(水) 18時00分


◆今の東京芝で要求される「力」とは……

 今週行われた東スポ杯も、良馬場で行われた過去4年では最も遅いタイム。もちろんペースも遅かったのですが、それは早く仕掛けると止まる馬場だから。1人気のロスカボスも先行して止まりました。10レースの鷹巣山特別も昨年よりも前半の1000メートル、後半の1000メートルはいずれも遅いタイム。

 しかし、単純に時計がかかる馬場ではありません。直線では急加速する「スプリント力」も要求されています。東スポ杯のレースラップもラスト2ハロン目は10.9秒。勝ち馬のスマートオーディンはスプリンター並みの末脚を使っていました。

「今の」東京の芝が、直線で「スプリント力」が要求されるのは、今の芝が例年以上にクッション性のある馬場になって「欧州指向」の馬場になっている影響は強いはず。

 従来よりは重い芝をこなすために、直線に入るまではゆっくり追走して、脚を温存できる「体力」。加えて、ラストでは「急加速」する「スプリント力」が要求されているのです。(一応、後講釈ではなく、東スポ杯はスマートオーディンが本命でした。菊花賞もレース前からスプリント力重視(1、2着は母父スプリント血統)の予想ができれば、もう少し後講釈に説得力が出たのですが…)

「欧州指向」の馬場最大の特徴は、馬力が要求されることですが、直線で急加速する「スプリント力」も重要なポイント。たとえば、先日の凱旋門賞。残り600メートルから400メートルは12秒程度の遅いタイムでしたが、ラスト400から200で急加速。10秒台の時計が出ました。

 上位馬の血統も1、2着がダンチヒ系で、3、5着がシーキングザゴールド系(大系統ミスプロ系)。いずれも日本ではスプリント戦で活躍する系統。

 振り返れば、凱旋門賞で日本の馬(サンデー系)が高いパフォーマンスを発揮するのは、いつも湿った馬場。乾いた馬場だと、直線でのスプリント能力、スプリント能力源にもなるパワー勝負で敗れてしまうのかもしれません。

 なんて、ジャパンカップ週に凱旋門賞のことを持ちだしたのは、先に書いたように、今秋の東京芝は「欧州寄り」の馬場になっているため。

 短絡的に考えれば、今年は例年以上に欧州勢にもチャンスがある馬場ではないでしょうか? 

 特に「スプリント力」とその源でもある「パワー」ならサンデーサイレンス以上のレベルにある血を持った馬。それでいて、日本の芝G1でも実績を残す血を持った馬を狙ってみたいのですけれど…ここは、冷静に日本馬のなかで「今年の馬場」向きの馬。サウンズオブアースを取り上げましょう。

 父のネオユニヴァースは、芝のクラス別成績では新馬戦がダントツの勝率。新馬戦は、道中までは脚をタメにタメ、直線で「急加速」するレースパターンが多い競技。ネオユニヴァース自身も現役時代は重い芝で脚をタメ、直線で急加速するレースパターンで二冠を獲得しました。今年のJCは例年以上に「新馬戦に近い適性」が要求されやすい馬場。ネオユニヴァース産駒には合いそうです。

 母父はディキシーランドバンド。日本での産駒は、勝ち星のほとんどが1200メートル以下。とはいえ、スプリンター種牡馬ではありません。海外では4000m以上のG1勝ち馬を出していますし、日本でも同種牡馬を母父に持つデルタブルース(菊花賞、メルボルンC優勝)、アメリカンボス(有馬記念2着)が長い距離で結果を出しています。

 ディキシーランドバンドが日本の中距離で結果が出なかったのは、欧州の芝ほど直線での「スプリント力」や「馬力」が要求されないレースが多いのも影響したはず。今の日本競馬でも、欧州の主流系統であるノーザンダンサー系種牡馬が日本ではスプリント戦で勝ち星を稼ぐ産駒も多いことと同様の理由です。

 今年の東京芝は、先に書いたように例年よりもスプリント力と馬力を兼ね備えたスタミナ血統馬が走りやすい馬場。ノーザンダンサー系のディキシーランドバンドの血も例年以上に合うはず。枠は自身の持ち味を引き出すためにも内枠がベターです。

 なんて小話をカマシてみましたが、このレースでベタに強いディープ牝馬のミッキークイーンは、1400メートルにも対応できる「スプリント力」も兼ね備え、脚もタメることができる馬。母は欧州の重賞勝ち馬で、母父も欧州の急加速レースに強いノーザンダンサー系(小系統ヌレイエフ系)。

 それでも、「今年ならでは」の血統馬が走る。「今年の馬場だから外国馬が走る」という妄想を馬券で示したい気分です。(決して「ディープ牝馬」だとコラムが三行ぐらいしか書けないからではありません)

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

血統馬券予想理論『血統ビーム』の提唱者で、『ブラッドバイアス』『大系統』『小系統』などの血統予想用語、概念の作者。血統ビームの革新性は20世紀末の競馬予想界に衝撃を与え、現在は競馬ファン、競馬評論家に多大な影響を与え続けている。また『競馬予想TV!』『競馬血統研究所』(ともにCS放送フジテレビONE)に出演するなど活躍中。Twitterはコチラ。
ウマい馬券にて『血統ビーム』の予想提供中

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング