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ラキシスの全弟サトノケンシロウ

  • 2016年01月13日(水) 12時00分
エイシンヒマワリ(牝 栗東・今野貞一 父Uncle Mo、母Home From Oz)
 母Home From Ozは名種牡馬Tapit(2年連続米リーディングサイアー)の全妹にあたる良血で、繁殖牝馬としても優秀。アメリカ時代に産んだMadefromlucky(父Lookin at Lucky)はピーターパンS(米G2)とウェストヴァージニアダービー(米G2)を制した。日本で走ったエーシンゴールド(父Medaglia d'Oro)はジャパンダートダービー(JpnI)で2着となり、骨折により惜しくも早世した。本馬はその半妹。父Uncle MoはブリーダーズCジュヴェナイル(米G1)、シャンペンS(米G1)など3戦全勝で2歳チャンピオンに輝いたスピード馬。3歳時は内臓疾患のため調子が上がらず、通算8戦5勝の成績で引退した。種牡馬としては現3歳世代が初年度産駒。昨年の米新種牡馬チャンピオンに輝いただけでなく米2歳種牡馬チャンピオンも獲得するという華々しいスタートを切った。日本で走った産駒は3頭中1頭が勝ち上がり、新馬戦(芝1600m)で2着に敗れたあと骨折休養中のハリケーンバローズは、同レースの1着がエアスピネル(15年デイリー杯2歳S-GII)、3着がロジクライ(16年シンザン記念-GIII)なので素質が高い。本馬は、どちらかといえばダートのほうがよく、距離は万能。先々まで楽しめそうだ。

クラストリック(牡 美浦・戸田博文 父ハットトリック、母クラシーアセッツ)
 3代母Fall Aspenは20世紀を代表する名繁殖牝馬の1頭で、競走馬となった13頭の産駒のうち11頭が勝ち上がり、4頭のG1馬を含む8頭の重賞ウィナーを送り出した。そのなかには本邦輸入種牡馬ティンバーカントリー(米2歳牡馬チャンピオン)も含まれる。孫世代からDubai Millennium(通算10戦9勝、Dubawiの父)などを出しており、その血統的な影響力はきわめて大きい。父ハットトリック(05年香港マイル-香G1、05年マイルCS-GI)は引退後アメリカへ渡って種牡馬となり、初年度産駒のDabirsimはジャンリュックラガルデール賞(仏G1)やモルニ賞(仏G1)を制し、カルティエ賞最優秀2歳牡馬、仏年度代表馬に選出された。Dabirsim以外にも、アメリカでKing Davidが、アルゼンチンでZapataとGiant KillingがG1を制しており、海外におけるサンデー系の最も活力あふれる系統となっている。日本に入ったハットトリック産駒は4頭が出走を果たしたものの勝ち上がった馬は出ていない。ハットトリックは異系色が強く、Mr.ProspectorもNorthern Dancerも持っていない。したがって、「Mr.Prospector+Northern Dancer+Fall Aspen」の母クラシーアセッツは悪くないだろう。芝向きの中距離タイプ。

サトノオニキス(牝 栗東・矢作芳人 父ディープインパクト、母ミスティックリップス)
 母ミスティックリップスはドイツ産馬で、現役時代に独オークス(独G1)を勝ったほか、独1000ギニー(独G2)で2着となっている。ヨーロッパ時代に2頭、日本に輸入されてから1頭の産駒がデビューしているが、活躍した馬は出ていない。3代母Majoritatはエイシンフラッシュ(10年日本ダービー-GI、12年天皇賞・秋-GI)の3代母で、2代母Majorataとエイシンフラッシュの母ムーンレディは配合構成が似ている。ドイツ血統と父ディープインパクトは相性がよく、トーセンレーヴとジョワドヴィーヴルの兄妹やワールドエースといった活躍馬が出ている。エイシンフラッシュの半弟ダノンムーン(父ディープインパクト)も度重なる故障に悩まされながらも[4-2-3-1]という成績で、本馬の母の父ジェネラスは父ディープとニックスの関係にあるCaerleonを父に持つので、全体の配合構成も悪くない。芝向きの中距離タイプ。

サトノケンシロウ(牡 栗東・池江泰寿 父ディープインパクト、母マジックストーム)
 14年のセレクトセールにおいて2億円(税抜)で落札された高馬。エリザベス女王杯(GI)と大阪杯(GII)を制したラキシス、富士S(GIII)とエプソムC(GIII)でそれぞれ2着となったサトノアラジンの全弟にあたる良血で、母マジックストームは現役時代にモンマスオークス(米G2・ダ9f)を勝った。「ディープインパクト×Storm Cat」は成功しており、キズナ(13年日本ダービー-GI)、エイシンヒカリ(15年香港C-香G1)、アユサン(13年桜花賞-GI)、ヒラボクディープ(13年青葉賞-GII)、リアルスティール(15年共同通信杯-GIII)など多くの活躍馬を送り出している。「ディープ×Storm Cat」で重要なのは、残りの部分にHyperion-Alibhaiのようなブリティッシュトラッドの王道を添えること。本馬にはそれがない。しかし、母にはStorm Bird≒Nijinsky 2×3があり、これが底力の補強する役割を果たしているのだろう。芝向きの中距離タイプ。姉超えを期待したい。

スマートアンカー(牝 栗東・松田博資 父クロフネ、母マサコチャン)
 全姉ベストクルーズはファンタジーS(GIII)2着、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)3着。同じく全姉のマーチャンテイマーはブリーダーズゴールドC(JpnIII)3着。コンスタントに重賞クラスで活躍している。同牝系で同じ父を持つ馬にはホエールキャプチャ(12年ヴィクトリアマイル-GIを含めて重賞5勝)、シゲルスダチ(12年北九州記念-GIII・2着)、ドリームセーリング(13年中山金杯-GIII・4着)などがいる。「クロフネ+サンデーサイレンス+チヨダマサコ」を組み合わせるとBlue Moon=Blue Grotto≒Banish Fearというクロスが生じる。これがニックスの核心だろう。配合的な裏付けがあるので姉同様の活躍が期待できる。芝向きのマイラーで仕上がりは早い。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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