スマートフォン版へ

勝ったプロフェットの展望は広がった/京成杯

  • 2016年01月18日(月) 18時00分


昨年のベルーフよりワンランク上かもしれない

 勝ったのは昨年のベルーフに続いて、同じ池江泰寿厩舎の、同じハービンジャー産駒プロフェットだった。同じハービンジャー(父ダンジリ)の産駒とあって、少し寸詰まりにも映るガシッとした筋肉質の体型は、プロフェットも、ベルーフもかなり似た印象を与えるが、果たして似たような軌跡をたどるのだろうか。

 この日、日経新春杯に出走して5着だった4歳ベルーフは、正月の中山金杯でレース前に放馬して逸走したばかり。それもあって、陣営は「ベルーフほどきついところはない」と、3歳プロフェットの順調な成長に期待する。ただ、レース内容は「同じハービンジャー産駒」と思えるところが多かった。

 昨年のベルーフは、前後半「61秒9-60秒4」=2分02秒3(レース上がり35秒7-12秒3)で決着の京成杯を、後方追走から直線は大外に回して大接戦を差し切っている。自身の上がり3ハロンは「34秒8」であり、切れたというよりちょっとタイムがかかる底力勝負が合う印象を与えた。母レクレドール(父サンデーサイレンス)は、ステイゴールドの全妹になる。

 もちろんロイヤルサッシュ系の鋭さを受けついではいる。まして母の父はサンデーサイレンスではあるが、瞬発力を前面に出すタイプではなく、どちらかといえばスタミナとパワー勝負を歓迎するハービンジャー産駒。死角は、サンデーサイレンス直系、あるいはサンデーの血を味方にしたキングカメハメハ産駒などが好む全体時計の速いレースや、高速上がりのレースへの適性だった。きつい気性はむしろ長所。切れ味不足をカバーするレース運びがむずかしかった。

 今年の京成杯は、昨年より全体的に時計の出やすい芝コンディションだったこともあり、レースの前後半「61秒8-59秒6」=2分01秒4(レース上がり35秒7-12秒2)である。これを巧みにレースの流れに乗ったS.フォーリー騎手のプロフェットは好位から一完歩ごとに力強く伸びて抜け出し、自身の上がり3ハロンは「34秒6」。札幌2歳Sを1番人気に支持された期待馬らしい完勝だった。プロフェットは巨大なファミリーを築くフェアリードールから発展する牝系の出身で、祖母ビスクドール(父サンデーサイレンス)は、トゥザヴィクトリーの全妹。トゥザグローリー以下の活躍馬が近親に並んでいる。死角があれば、ベルーフ一族と同じようにサンデーサイレンスの血を取りこみながらも、案外、詰めの甘いジリ脚タイプが多いことか。

 プロフェットの勝った京成杯のレースレベルはどの程度なのか。これは難しいが、昨年の12月27日に行われたGII「ホープフルS・2000m」は、開催最終日のAコースで「62秒1-59秒7=2分01秒8(レース上がり35秒3-11秒7)である。今回の京成杯はCコースに移って、ホープフルSの勝ち時計を0秒4上回っている。はっきりスローだったホープフルSは、上がり3ハロンは京成杯とさして差がない35秒3でも、「11秒5-11秒7」の爆発力勝負になった最後の2ハロンで猛然と抜け出したハートレー=ロードクエストの最後は「34秒3=34秒1」だった。

 プロフェットの京成杯は残り4ハロンから「11秒9-11秒7-11秒8」のラップが連続したため、最後の1ハロンは12秒2となり、ゴール寸前の迫力では「ハートレー、ロードクエスト」に大きく見劣ったが、今回出走していたホープフルS最先着の6着プランスシャルマンは、今回も同じような着順の7着で「2分02秒7→2分01秒9」。当時7着ブレイブスマッシュは、今回は12着で「2分02秒7→2分02秒7」。

 京成杯の全体レベルは、印象度は低くてもホープフルSとそう差はないだろう。勝ったプロフェットの展望は広がった。勝ち時計からして、昨年のベルーフよりはワンランク上かもしれない。ただし、フェアリードール(父ヌレイエフ)の牝系にハービンジャーの組み合わせらしく、全体時計の速いレースはいいとしても、高速上がりの切れ味勝負になったときには、前出ハートレー、ロードクエスト、さらには朝日杯FSを上がり33秒3で突き抜けたリオンディーズには、かなり見劣るのではないかという死角は消えない。

 1番人気で5着に沈んだウムブルフ(父ディープインパクト)は、F.ベリー騎手が「なだめようとしたが、ずっとピリピリしながら走っていた」とコメントした気性の若さが出たともいえるが、この馬、前回は前半1000m通過「61秒5」の流れを早め早めに追走する形になったが、好スタートを意識的に下げた今回の位置取りは、自身の1000m通過推定「63秒台後半」に落ち、控えた瞬間からずっとかかりながらの追走だった。

 控えても切れるタイプではないのは1番人気の未勝利戦で勝てなかったムーア騎手が理解し、2度目は積極スパートで圧勝している。前回の圧勝が2分02秒9(上がり34秒8)。今回が、あれだけかかり通しで2分01秒9(自身の上がり34秒9)。能力不足というより、ベリー騎手への助言が少し足りなかった気がする。1番人気のディープインパクト産駒である。ベリー騎手でなくともふつうは当然のように下げたくなる。

 ウムブルフと同じく母の父にモンズーン(父ケーニッヒシュトゥール)を持つ2着のケルフロイデ(父キングカメハメハ)は、ウムブルフと同様に母方がドイツ血統。勝ったプロフェットと前後するように積極的に流れに乗ったのが正解だった。「惜しかったけど、成長している(石橋脩騎手)」。緩い流れの内枠。その利をフルに生かし切った。

 ただ1頭だけ、上がり33秒9で大外から突っ込んできたのは、同じノーザンFの生産馬で、同じキャロットクラブのメートルダール(父ゼンノロブロイ)。3代母ボールドエンプレス(父ダイイシス)は、名種牡馬ザフォニックの半妹。ここまで素晴らしい追い込みで2連勝してきたから、いきなり戦法を変えるわけにはいかなかった。だが、それなりのレベルの候補がそろう多頭数のレースでは、実際に今回もそうだったが直線で一気にスパートできるスペースが空くとは限らない。あの切れ味からみて、この組み合わせでは秘める資質No.1の評価も可能だろう。しかし、これからはもっと相手強化のビッグレース展望となるだけに、レース前半の位置取りが難しくなりそうである。このタイプ、タメるからこそ切れるスタミナ温存もテーマなので、少し前につければいいというものでもない。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング