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フェブラリーSでの連続快走も可能/根岸S

  • 2016年02月01日(月) 18時00分


速い時計で勝った馬はフェブラリーSでも悪くない

 直前のシルクロードSでは、春のGI「高松宮記念」を大きな目標にするダンスディレクター(父アルデバランII。祖母スカラシップはウイ二ングチケットの全妹)が快勝した。こちらの勝ち馬も春の先駆けとなるGI「フェブラリーS」にぜひ出走したい若い4歳馬モーニン(父ヘニーヒューズ)であり、ともにこのあとの展望が大きくふくらむことになった。

 中間の雨の影響がのこって「稍重」のダートは時計の出る馬場状態。だが、8Rの古馬1000万下のダート1400mの勝ちタイムが、少々楽なペースとはいえ1分24秒2。そこには1分24秒0より速い持ち時計のある馬が数頭いた。また、前半1000m通過58秒5のハイペースだった7Rの古馬500万下が、1分36秒8の勝ち時計にとどまったあたり、時おり出現する東京の「高速ダート」の日ではなかったろう。

 それを考えると、「34秒6-(11秒8)-35秒6)」のバランスで「1分22秒0」は文句なしに速い。2001年ノボトゥルーの1分22秒1(不良)を更新するレースレコードであると同時に、2008年フェラーリピサ(5月の欅S、不良)のコースレコード1分21秒9にわずか0秒1差の快時計だった。

 では、いきなりだが、4歳モーニンはGIフェブラリーSの有力馬になったのだろうか。ノボトゥルーは直後に、フェラーリピサは、翌2009年の根岸Sを1分22秒1で勝った年に、フェブラリーSに出走している。

 ダート1400mの「根岸S」が、1-2月の施行となった最初がノボトゥルーの2001年であり、昨2015年までの15年間、根岸Sの勝ち馬は本番で【2-1-2-7】。不出走3頭。連勝したのは、5番人気だった5歳馬ノボトゥルーと、本番フェブラリーSでも1番人気に支持された2005年の4歳メイショウボーラーの2頭。

 また、この15年間、根岸SをステップにフェブラリーSを勝ったのは、そのノボトゥルー(根岸S1着)、2005年メイショウボーラー(根岸S1着)、2012年テスタマッタ(根岸S3着)の3頭であり、2着したのは2012年シルクフォーチュン(根岸S1着)1頭だけ。

 この15年間のフェブラリーS連対馬30頭のうち、根岸Sをステップにした馬はたった「4頭」だけという数字を前にすると強気になれないが、根岸Sの勝ち時計上位6頭は、01年ノボトゥルー「1分22秒1」、09年フェラーリピサ「1分22秒1」、08年ワイルドワンダー「1分22秒7」、02年サウスヴィグラス「1分22秒8」、05年メイショウボーラー「1分23秒0」、11年セイクリムズン「1分23秒0」であり、フェブラリーSの成績は順に「1着、5着、3着、6着、1着、14着」だった。

 速い時計で勝った馬の成績はそう悪くない。モーニンには、メイショウボーラーと並んで最近15年の根岸Sではたった3頭しかいない4歳の勝ち馬という、上昇の強みがある。

 また、メイショウボーラー(父タイキシャトル)の母の父は、当時は日本の活躍馬の血統図になかなか登場してくれないストームキャットだった。モーニンの場合、近年、代を経て日本では逆に影響力を高めてきたストームキャット直父系であることが強みとなるかもしれない。日本で1年だけ供用された祖父ヘネシー(父ストームキャット)は、その時の代表産駒にサンライズバッカス、コパノフウジンがいても、全体には早熟型の短距離馬が大半だった。だが、ヘニーヒューズ(父ヘネシー)は数少ない輸入産駒からアジアエクスプレス、ケイアイレオーネ、ヘニーハウンドなどを送り、代表産駒の牝馬ビホルダー(米)は2-3歳時、そして5歳時の昨年は3回目のエクリプス賞に輝くなど、もう早熟性とは一線を画す広がりをみせている。

 ミスタープロスペクターの3×4の血を持つ母に、ストームキャット系種牡馬だと、スピード能力に優れる一方、典型的なアメリカ血統のもつ単調な死角は否定できないが、05年のメイショウボーラーと同じように、「稍重-不良」など、締まったダートが味方するなら、フェブラリーSでの連続快走も可能だろう。まだ底をみせていない。ダート巧者にありがちな体の硬さがなく、弾むようなバネがある点が素晴らしい。

 2着タールタン(父タピット)は、これで東京ダート1300-1400m【3-3-1-2】の距離適性を存分に発揮。8歳馬だが少しの陰りもなく、目下絶好調だった。フェブラリーSに登録する予定だが、ダート1600mは【0-0-1-3】。距離には死角がある。

 同じく8歳グレープブランデー(父マンハッタンカフェ)は、2013年のフェブラリーS勝ち馬らしい底力を発揮した。さすがである。ハミがかりが良すぎて「最近は1400mくらいの方が合う」とされるが、その通りの内容だった。ノンコノユメなど数頭を別に、フェブラリーSに回ってきそうな強敵がやや少ない出走状況に望みをつなぎたい。

 1400mベストの2番人気タガノトネール(父ケイムホーム)は、武蔵野S、南部杯の内容からすると案外の4着にとどまった。速い時計は望むところだが、トップクラス相手になるともうひとつ決定力を欠く弱みが出てしまうのかもしれない。アンズチャン(父フレンチデピュティ)は、ただ1頭上がり34秒台で伸び、自己最高タイムを0秒5も短縮する1分22秒8。一歩前進したが、速い全体時計を求められるレースは厳しく、むしろスローの接戦向きか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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