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松田博資厩舎、いよいよラストランへ

  • 2016年02月25日(木) 19時00分


 先週、アルバートドックで見事重賞勝ちをおさめた松田博資厩舎。これがJRA通算799勝目となり、800勝へ王手をかけました。一時はペース的に難しいかな?と思われた800勝でしたが、きっちりリーチをかけるあたり、さすがですね。持ってます!しかも、最終週に決着を持ち越すなんて、客側からしたら最高にドラマチックです。すごいなぁ。

 しかしながら、当の松田先生はこの件、積極的には興味がないようで「いつもと変わらないさ」と平常心を崩しません。先生、らしいですね。

ねぇさんのトレセン密着!

通算800勝にリーチをかけた松田博師


 むしろ、松田先生は一貫していかにして自分の管理馬や従業員たちを次の厩舎へ引き継ぐか。そればかりを考えているようにお見受けします。今年に入ってから、従業員に積極的に有給休暇をとらせたりしていました。これも「次の厩舎で気持ちよく働いてほしいから」という先生の気持ちのあらわれ。管理馬も次の厩舎が決まっていれば早々に転厩させたり、従業員が次の厩舎で担当するであろう馬をいったん引き取って調教させたり。目先の損得を考えれば“損”になることでも、かまいなく引き受けていらっしゃいました。本当に懐が広い、先生らしい判断だと思います。今週、中山記念に出走するラストインパクトも早々に転厩した1頭ですね。ドバイ遠征を意識しているということで早々に移動し、行った先の角居厩舎では「乗った人はみな、乗りやすいといいます。本当にすばらしい馬。GOといえばすぐに行くし、控えるときもすみやかに人に従います」(前川助手)と絶賛していました。

 netkeibaさんの企画で先生へのお手紙というかたちでこれまでの感謝の気持ちや思い出を書かせていただきました。正直、わたしにとってはひじょうに照れくさい案件でしたが、このような機会をいただけたことで先生にもしっかり自分の気持ちを伝えることができました。これを企画してくださったnetkeiba編集部には感謝の気持ちでいっぱいです。

 先生はいつも朝の調教の直後に記者たちが感想を聞いても答えません。いったん、厩舎に戻って馬の状態を確かめてからしか答えないんです。だから、今回手紙をお渡ししたときも受け取った直後は特に感想はありませんでした。でも後日、トレセンを歩いているわたしを見つけてわざわざ呼び止めて下さって「読んだよ、ありがとう。ありがとう」とはちきれんばかりの笑顔でお礼を言ってくださいました。御礼を言うのはわたしのほうなのに…。ほんと、先生のそういう姿勢はぶれません。尊敬します。

 その手紙にも書かせていただきましたが、松田先生には本当にお世話になりっぱなしでした。最初はベガで取材をさせていただきましたが、頻繁に取材をさせていただくようになったのはちょうどキャプテンベガがクラシックを意識しだしたあたりからでした。キャプテンベガは垢抜けてすばらしくカッコいい馬なんだけど、勝ちみに遅く…。松田先生も「お坊ちゃま。揉まれると駄目だなぁ」といつも唸っていました。

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お坊ちゃまだったキャプテンベガ


 そのあと、ブエナビスタの取材では、かなりお世話になりましたね。ブエナが調教で動かなくなったときも、先生は決して動じず、ブエナのご機嫌をとるわけでも損なうわけでもなく淡々と付き合っていらっしゃいました。牝馬は気持ちの扱い次第では競馬が嫌いになってしまうことはよくありますし、一度成績が落ちたら復活させるのは至難の業といわれています。その中で降着にも海外遠征での惨敗にもめげず、淡々とブエナを支え続けてきたからこそジャパンCでのあの勝利があったのではないでしょうか。

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ブエナビスタ 2010年5月撮影


 懇意にさせていただいた先生の引退は本当に寂しい。ただ、池江泰郎先生が引退されるときは、事前に引退後も競馬業界で活動されることを知っていたこともあり、寂しさこそあれど“お別れ”という気持ちはまったくありませんでした。

 でも、松田先生の場合は「これでひとまずお別れ」という感じが強く…うーん、それを思うとこれを書いている今ですら、思わず涙ぐんでしまいます。

 まぁ、引退後もトレセンに顔を出される先生もいらっしゃいますし、健康のために早朝に歩いている方もたくさんおられるんですが。松田先生もそのように来てくださるといいですね。どうだろう?まだまだお元気でいて欲しいと願ってやみません。

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ブエナビスタのラストラン直前、記者たちに囲まれる松田博師


 そして、今週のJRA通算800勝。先生はあまり興味はなさそうですが、スタッフも騎手も気持ちが入っていることでしょう!引退の前に、ウイナーズサークルで先生の笑顔がみられるようお祈りしております。

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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