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武豊展を見て

  • 2016年05月07日(土) 12時00分


 このところ、武豊騎手の存在感が、ものすごい。

 春天では芸術的なイーブンペースでキタサンブラックを勝利に導き、翌月曜日は、火曜日から日本橋三越本店で開催中の「武豊展」の内覧会に参加。水曜日は1000人ほどを集めてトークショーを行い、木曜日は船橋で行われたかしわ記念をコパノリッキーで制し、Dr.コパこと小林祥晃オーナーの69回目のバースデープレゼントとした。そして、この稿がアップされる土曜日には、ラニでケンタッキーダービーに参戦する。

 私も、武豊展に合わせて発売された写真集に文章を書くなど、少し関わっているので、月曜日の内覧会を見に行った。基本的に、関係者とマスコミへの事前のお披露目という形だったのだが、それでも、ものすごい数の人が来ていた。北島三郎、木梨憲武、草野仁、武井壮、橋本聖子、ヒロミ、堀内健、見栄晴(五十音順、敬称略)ら有名人の姿もあり、さらに、久しぶりに公の場に現れた量子夫人もいたので、極め付きに華やかだった。

 記憶違いでなければ、武豊展が開催されるのは、今回が3度目だ。1度目は彼が30歳になったときだから1999年、2度目はデビュー20年目だったから2006年、そして、デビュー30年目の今回。騎手としてのキャリアを重ねながら、次々と金字塔を打ち立てているからか、1度目より2度目、2度目より3度目のほうが規模が大きく、豪華になっている。

 4日、水曜日のトークショーにも行ったのだが、想像以上に多くの人が会場の内外にいたので驚いた。

 そもそも、自分の名前に「展」をつけたイベントをやれるだけでもすごいのに、このとてつもない動員力は何なのか。彼と初めて話したのは1990年の春だから、もう四半世紀を超える付き合いになるのだが、

 ――これほどの人たちが姿を見たがる武豊という人は、本当に私の知り合いの、あの人物なのだろうか。

 と不思議な気分になるほどだった。

 この日は、開催初日だった前日の3000人を上回る約4900人が三越本館7階ギャラリーの会場を訪れ、屋上で行われたトークショーには1000人ほどが集まったという。

 そこでのトークがまた面白かった。

 飛び入りで参加したフジテレビの福原直英アナウンサーが、「エレベーターに乗ったら、全員が7階で降りました。みなさん、武豊展を見に来たのでしょうね」と言うと、「いや、同じフロアでやっている『昭和のスターとアイドル展』じゃないですか」と返して笑いをとった。

 また、来場者のアンケートに、「今、一目置いている騎手はいますか」という質問があり、それに対しては、「うーん」と少し考えてから、

「あ、ひとりいます」

 と答えた。ミルコ・デムーロ騎手かクリストフ・ルメール騎手の名でも挙げるのかと思いきや、こうつづけた。

「藤田菜七子騎手です。すごい人気ですよ。パドックで馬に乗っているのに、自分にカメラが向けられない、という経験を初めてしました。いや、レンズは向けられるんですけど、シャッター音がせず、ぼくが通りすぎてから音がしはじめる。後ろを見ると、そこに藤田騎手がいるんです」

 そして、「今、一番勝ちたいレースは」という問いには、こう答えた。

「明日(5日)のかしわ記念です」

 これも、だいたいの人が、凱旋門賞かケンタッキーダービーなどを挙げると予想していたはずだ。

 通算3000勝を達成したら、次の目標は3001勝という彼らしいと言えば彼らしいのだが、それを「ウィットの利いたコメント」に終わらせず、本当に勝ってしまうところが武豊の武豊たる所以なのか。

 GI馬6頭という豪華メンバーになった今年のかしわ記念で、コパノリッキーは、春天のキタサンブラックと同じ1枠1番から出て、3馬身差で圧勝した。同レースの売上げは12億円を超え、船橋競馬場の1レースあたりのレコードを一気に3億円近く更新した。

 GI6勝目を挙げたコパノリッキーの陣営は、今秋のアメリカ、ブリーダーズカップ参戦の可能性をほのめかした。自身の誕生日を愛馬のGI勝利で祝うオーナーもすごいが、やはり、武豊という特別な力を持った稀代の名騎手との「合作」だったからこそ、こうして華やかなニュースになるのだろう。

 日本橋三越本店での武豊展は5月9日まで開催される。

 少し先になるが、同様の「デビュー30周年記念 武豊展〜名馬と共に歩んだ30年〜」が、5月27日から6月12日まで、ジェイアール京都伊勢丹7階に隣接する美術館「えき」KYOTOで開催される。

 そちらも、機会があれば見に行きたい。

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作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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