ここを勝って広がる未来展望
牝馬の路線とは逆に、3強、4強とされた有力候補が少なくとも6〜7に達する素晴らしい日本ダービーになった。
皐月賞を「1分57秒9」のレースレコードで快勝した
ディーマジェスティ(父ディープインパクト)には、勝った時点で大きな死角が生じていた。ディーマジェスティより前に、皐月賞2000mを「1分58秒台」の速い時計で勝った馬が5頭存在する。
皐月賞→日本ダービーの連覇は決して至難ではないが、昨2015年のドゥラメンテが勝っただけで、他の4頭は(馬場状態もあったが)、ことごとく凡走して【1-0-0-4】だからである。
皐月賞は、考えられているよりはるかに厳しい2000mであり、快時計で勝った馬には反動が出る危険がある。実際、ディーマジェスティには体調不安説がささやかれ、(どの程度かは不明ながら)少し熱が出たという情報が飛びかった。1週前の19日に速い時計で追い切りが行われ、気配、動きともに上々だったことにより、皐月賞の反動は心配されるほどではなく、軽いものだったとなった。また、時計の速い日だったとはいえ、これまでにない快時計の最終追い切りをこなしたことにより、不安説はほぼ一掃された。
ただ、調教の流儀でもあるが、速い時計が少ないこと。パワー型のように映っていた動きが、個人的には急に別馬のように軽快に柔らかくなった気がしないでもないので、それが成長の証しなのか、人気馬だからどのみち不安がささやかれる対象になるのが常ではあるが、少々の不安はある。
だが、3歳になっての最重要な共同通信杯を(この時も完調一歩手前とみられながらも)ねじ伏せるように勝った。共同通信杯と、皐月賞をともに勝った馬は、日本ダービーで【3-1-0-1】の記録の意味するところは大きい。明らかに能力上位に通じるからである。また、有利とはいえない最外18番で皐月賞を3着以内に好走した馬も、皐月賞のフルゲートが18頭になって以降、【3-1-0-1】である。
父、母の父ともにこの時期に急速に成長する産駒が多いから、クラシック型とされるが、ディーマジェスティは牝系の特徴まで合わせ、その典型血統でもある。
ラッキー馬番として知られる1番枠を引いたのも、実際は明暗紙一重とはいえ、ディーマジェスティ(蛯名騎手)に巡ってきたダービー制覇の幸運だろう。蛯名騎手=ニノ宮調教師=ディーマジェスティ(血統背景に、モンズーンも、トレヴも、父ディープインパクトも関係する)には、やがて凱旋門賞に挑戦しなければならない「定め」のような長年の積み重ねがある。
まず、リーチのかかった日本ダービーを制したい。それによって広がる未来展望は、果てしないほど大きく膨らむはずである。