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秋華賞

  • 2004年10月18日(月) 12時59分
 「紙一重」という例えがあるが、この日のダンスインザムードは、オークス時の返し馬から集合合図がかかった際と全く同じ精神状態に、パドックから陥っていた。登場したダンスインザムードを見て、多くのファンがその凡走を予感したかもしれない。イレ込み、発汗…のレベルではなく、送られてくる映像を通してでも、滝の様にしたたり落ちる汗の音が聞こえてくる様だった。

 アメリカに遠征した時でさえ、あれほど落ち着き払い、タフな精神力を見せていた天才少女は、また突然、オークス時と同じ様に気持ちだけが別の世界に入っていた。残念だが、立て直しの休養に入るしかない。一度だけでなく、二度目のパニック状態だった。慎重だった陣営も、こればかりは防ぎようがなかった。長い時間をかけて立て直したいが、決して悪い意味ではなく、彼女の本質が「紙一重」。この危険は治らないかもしれない。

 追い込み一手の脚質から、再三悔しい数戦を重ねていたスイープトウショウの方は、ローズSの早い仕掛けの「試み」を教訓に、後方一気に徹した。1分58秒4(59秒9-58秒5)の流れは決して追い込み向きとも言えず、これを大外一気の追い込み(上がり33秒9)は文句なしの能力だった。エンドスウィープ(父フォーティナイナー)の評価は、更に複雑で不思議な血を伝える種牡馬として、様々に幅が広がったままとなる(02年死亡)。スイープトウショウの場合、もちろんタフな牝系の底力も大きいのだが…。

 ヤマニンシュクルは、逆に早め早めに動いて、こちらも力を出し切った。14頭もサンデーの直仔と孫がいた中、サンデーの血を持たない2頭(4頭中)の1〜2着だった。間を空けてこそキチッと能力を出し切れるタイプで、どうやらベストはマイル前後という事もハッキリした。

 ヤマニンアラバスタは、中団でうまく折り合い気配も絶好に見えたが、勝負どころ(スパートのタイミング)を逸した格好で、少し思い切りが悪かった気もする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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