長距離戦の重要度も忘れないでおきたい
1200mのスプリント戦だと、ハナ差、クビ差、あるいは「0秒1〜0秒2」の差が重要な岐路。時計の差はつかない。しかし、菊花賞3000m、天皇賞・春の3200mとなると、明確な「タイム差」が生じる。したがって、馬場差、ペースなどは別に、長い歴史の中では「長距離こそ時計の優劣がレベルを示す」という考え方が成立する。
近年のステイヤーズS・3600mの勝ち時計は、だいたい3分45秒台前後が一般的だが、レコードは1994年のエアダブリン(父トニービン、母ダンシングキイ)の「3分41秒6」である。この差は驚くほど大きい。
長距離戦は競走体系の中で、主要で重要な位置から外れて久しいが、人間の競走に「もっと距離を短縮しよう」という声はない。マイル〜2400mくらいが総合の勝負としても、サラブレッドの競走にも同じようなところがあり、数少なくなった長距離戦の重要度も忘れないでおきたい。半世紀にも達する悲願の凱旋門賞制覇を、決まって、止まって差されて負けているうちは、長距離のビッグレース不要論はむなしいことでもある。
昨年、格上がり後の初オープンにこの重賞を選んだ
アルバート(父アドマイヤドン、母の父ダンスインザダーク)は、全体時計こそ平凡でも、中位で折り合って仕掛けを待っていたムーア騎手がスパートの合図を送ったのは、最後の4コーナーを回る少し手前。そこから馬群を割るように抜け出して5馬身差の圧勝だった。
典型的なスタミナ型などということはないが、ダートの中距離G1も芝のマイルのG1も勝った父アドマイヤドンの母の父は、前出エアダブリンに登場したトニービン。アルバートの母の父ダンスインザダーク(父サンデーサイレンス、母ダンシングキイ)は、エアダブリンの2歳下の半弟である。3600mを現実に楽勝しているだけでなく、少なくともライバルより血統背景にもスタミナ不安はない。同じムーア騎手で1キロ増だけ。紛れのない距離だけに、信頼性は高い。
順当に長距離戦専門の
モンドインテロと、昨年の2着時より調教の動きがずっといい
カムフィーが相手本線。昨年、インから伸びかかって2着カムフィーとは0秒2差だった
マイネルメダリストも、もう上昇などありえないが、この距離だから少しだけ買いたい。