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世界各地でブリーズアップセールの季節に

  • 2017年03月15日(水) 12時00分


◆欧州の2歳市場に初めて日本産のディープインパクト産駒が登場

 北半球のブラッドストックセール・サーキットは、調教済みの2歳馬が上場されるブリーズアップセールの季節を迎えているが、3月29日には北米カリフォルニアで「バレッツ・マーチセレクト2歳セール」、4月18日・19日には英国ニューマーケットで「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップ」と、米欧で2歳セールの老舗市場ともいうべきマーケットの開催が迫っている。ロサンゼルスから車で1時間ほどの内陸部に位置するポモナから、サンディエゴの北20分ほどの地点にある海辺のリゾート地デルマーに舞台を移して2年目の開催となるのが、「バレッツ・マーチセレクト2歳セール(公開調教3月27日、セール開催3月29日)」である。

 2016年、G1JBCスプリントを含めて年間で4つの重賞を制覇。通算では9つの重賞を制し、3億6749万円の賞金を獲得して、今春から種牡馬となったダノンレジェンド(父マッチョウノ)は、2012年の当セールにて38万5千ドル(当時のレートで約3195万円)で購買された馬だった。早熟と言われがちな2歳セール出身馬だが、本格化したのは4歳秋で、そこから自身の購買価格の10倍以上にのぼる賞金を収得した、馬主孝行な馬である。第2のダノンレジェンドが埋蔵されているかもしれない。

 今年のカタログに記載された馬は134頭だ。血統的注目馬を何頭か挙げれば、まずは、上場番号19番の父ウォーフロントの牡馬。母リヴァーベルがG2ミセスレヴェールSなど重賞を2勝した馬で、半姉にG1ジャストアゲイムS2着馬ストラスネイヴァーがいる。上場番号29番の父スマートストライクの牡馬は、母シークレットステータスがG1マザーグースSなどG1・2勝馬で、半兄にG1ベルモントS2着馬ダンカークがいる。上場番号33番の父スーパーセイヴァーの牝馬は、母シスターガールブルースがG1ヴァニティH2着馬で、半兄にG1ケンタッキーダービー2着馬ファイアリングラインがいる。上場番号37番の父メダグリアドローの牝馬は、G1デルマーデビュータントSなどG1・2勝馬ウィーミスフランキーの半妹にあたる。上場番号60番の父ランナウェイアンドハイドの牝馬は、昨年、G1サンタアニタH,G1ゴールドC@サンタアニタと、西海岸における古馬の基幹G1を2勝したメラトニンの半妹だ。

 そして、上場番号118番の父ティズナウの牡馬は、G1エイコーンS勝ち馬フォレストシークレッツの甥にあたり、昨年9月の1歳市場にて32万5千ドルという高値でピンフックされている。キャッチフレーズの“Where The Turf Meets The Surf"が示すように、海辺に立地するのがセールの会場となるデルマーで、全米で最も美しい競馬場の1つと言われている。そして今年の秋にはここが、ブリーダーズCの舞台となるだけに、春のバカンスを兼ねてのセールと競馬場の視察というのも、悪いプランではないはずだ。

 一方、欧州2歳セールとしては最高の実績を誇るのが「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール(公開調教4月17日、セール開催4月18日・19日)」である。2016年もセール出身馬の活躍は顕著で、例えば、15年の当セールにて11万ギニー(当時のレートで約2044万円)で購買されたヴェンチュラストーム(父ゾファニー)は、3歳だった昨シーズン、ドーヴィルのG3リュー賞(芝2500m)で重賞初制覇を果たすと、英国3歳3冠最終戦のG1セントレジャー(芝14F132y)で勝ち馬から3/4馬身差の2着に健闘。そして次走、イタリアに遠征して出走したG1ジョッキークラブ大賞(芝2400m)を制してG1初制覇を達成。今季の欧州12F路線を支える主軸の1頭となることが期待されている。

 あるいは、16年の当セールにて17万ギニー(当時のレートで約2767万円)で購買されたメーマス(父アクラメーション)は、2歳だった昨シーズン、8戦し、G2リッチモンド(芝6F)、G2ジュライS(芝6F)の2重賞を含む4勝をマーク。G1ナショナルS(芝7F)で16年の欧州最優秀2歳牡馬チャーチルの2着に入る活躍を見せていた。この他、15年の当セールにて20万ギニー(当時のレートで約3717万円)で購買されたストーミーアンタークティック(父ストーミーアトランティク)が、G3クレイヴンS(芝8F)に勝って、G1ジャンプラ賞(芝1600m)で2着に健闘。

 14年の当セールにて11万5千ギニー(当時のレートで約2053万円)で購買されたブランド(父ピヴォタル)が、G3サンダウンスプリント(芝5F6y)に勝って、G1ブリティッシュチャンピオンズスプリント(芝6F)で3着に健闘。12年の当セールにて1万7千ギニー(当時のレートで約229万円)という超お買い得価格で購買されたギフトーム(父ウォーパス)が、G3ザワウィC(d6F)に優勝するなど、近年のカタログ記載馬は140頭から160頭の間という、それほど上場頭数の多くないセールとしては、驚異的な確率で活躍馬を輩出し続けている。

 今年のカタログ記載馬は152頭。欧州の競馬関係者の間で大きな話題となっているのが、上場番号63番の母ソーインラヴウィズユーの牝馬だ。これがなんと、欧州の2歳市場に初めて上場される、日本産のディープインパクト産駒なのである。同馬は、母の1歳年上の半兄に、08年にG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)を含む5つのG1を制し、欧州古馬チャンピオンとなったデュークオヴマーマレイドがいて、母の5歳年下の半弟に、13年のG1英ダービー勝ち馬ルーラーオヴザワールドがいるという、超良血馬である。母の現役時代の馬主はクールモアで、A・オブライエン厩舎に所属して9戦1勝の成績を残した後、2番仔となる父シーザスターズの種を受胎していた10年にタタソールズ・ディセンバーセールに上場され、初日の最高値となる95万ギニー(当時のレートで約1億2668万円)で米国人馬主の代理人が購買。同馬はそのまま欧州にとどまった後、13年から供用地を日本に変え、初年度は不受胎に終わった後、14年の種付けでディープインパクトを受胎し、15年3月23日に新冠で生まれたのが、タタソールズ・クレイヴンに上場番号63番として上場される牝馬なのだ。

 ディープインパクトの血を求める声は世界の中での特に欧州競馬関係者の間で高まっており、将来の繁殖牝馬としての価値も含めて、同馬にどんな価格が付くかは、世界的な関心事となっている。

 今年のクレイヴンセール、もう1頭の超目玉が、上場番号17番の母ローレライの牡馬だ。父は、いまや種牡馬としても怪物であることが証明されつつあるフランケルである。同馬は、母の1歳年上の半兄に、G1愛チャンピオンS、G1アーリントンミリオンなど、欧米を股にかけて5つのG1を制したケイプブランコがいるという、活気ある牝系の出身だ。フランケルの即戦力にいったいどれだけの値が付くかも、おおきな注目を集めている。上場番号47番の父インヴィンシブルスピリットの牡馬は、母ラジームがG1ファルマスSの勝ち馬。上場番号58番の父アニマルキングダムの牡馬は、母シャドウキャストがG1パーソナルエンスンSの勝ち馬。上場番号79番の父オアシスドリームの牡馬は、G1クリテリウムドサンクルー勝ち馬モランディの半妹。上場番号105番の父デクラレーションオヴウォーの牡馬は、G1パリ大賞勝ち馬ベーカバドの半弟。上場番号135番の父デクラレーションオヴウォーの牡馬は、G1愛ダービー馬フローズンファイアの半弟。上場番号145番の父ダークエンジェルの牡馬は、G1クリテリウムドインターナショナル勝ち馬サフィシオの半弟と、カタログにはG1勝ち馬の産駒や弟妹が多数含まれている。

 4月18日から20日までの3日間は、ニューマーケット競馬場で競馬開催もあり、18日には英千ギニーの前哨戦となるG3ネルグウィンSが、19日には古馬による9FのG3アールオヴセフトンSが、20日には英二千ギニーの前哨戦となるG3クレイヴンSが組まれている。競馬とセールの両方を視察出来る4月半ばのニューマーケットも、馬好きならばぜひ身を置いておきたい場所と言えそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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