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ジンクスは破られるかもしれない/青葉賞

  • 2017年04月28日(金) 18時00分


◆大仕事を早い時期に成し遂げる血は受け継がれているはず

 重賞に昇格してからだけでもすでに23回。青葉賞をステップにした馬から「日本ダービー馬」は誕生していない。

 しかし、第1回の勝ち馬エアダブリンを筆頭に「青葉賞→日本ダービー」の日程で本番を2着した馬は「計6頭」も存在する。2003年のゼンノロブロイは半馬身差、2012年のフェノーメノは鼻差だった。また、3着した馬も「4頭」いる。

 日本ダービーでは皐月賞からの直行組が大きくリードするが、馬券に関係した2着、3着馬が計10頭もいるのだから、牝馬のフローラSと同じように、実際は2番目に重要なローテーションである。そろそろジンクスは破られるかもしれない。

 というのも、人気のアドミラブル(父ディープインパクト)は、皐月賞上位組にまったくひけを取らない素質馬である可能性が高い。2歳9月のデビュー戦はいいところなく完敗したが、理由はのど鳴り。すぐ手術するとこれが大正解。今年3月、半年ぶりの未勝利戦で戦列復帰すると、阪神の芝1800mを「1分45秒8」の快時計で楽勝してしまった。ペースは大きく異なり、時計の速い日ではあったが、元重賞級も含まれた同日の古馬オープン戦の勝ちタイムが「1分47秒1」である。モノが違うとたちまち高い評価をうけた2戦目が阪神2400mのアザレア賞。陣営がどこを目標にしているのか歴然だった。

 みんな慣れない距離とあって超スローのため、勝ちタイムの2分30秒0は平凡だが、レースの後半3ハロンは「11秒0-10秒9-11秒8」=33秒7。これを好位から楽々と抜けて3馬身差。自身の上がりは33秒5で馬なり(10秒台のラップを含む)だった。

 キャリアが浅いのは心配ない。4代母サンプリンセス(父イングリッシュプリンス)は、1983年の英オークスを3戦目に大差で独走している。未勝利馬だった。その産駒のバレークイーン(父サドラーズウェルズ)は日本に輸入され、父カーリアンの持ち込み馬フサイチコンコルドは、デビューして3戦目に日本ダービーを勝った。歴史が変わった日である。

 フサイチコンコルドの半妹グレースアドマイヤ(父トニービン)は、2007年の皐月賞馬ヴィクトリーの母となった。ヴィクトリーは3戦2勝の成績で皐月賞に挑戦している。

 アドミラブルは、母は未出走馬だが、曾祖母がバレークイーンである。大仕事を早い時期に成し遂げる血は受け継がれているはずである。かつて、重厚なヨーロッパタイプは完成されるのが遅いなどと誤解されていた時期もあったが。だいたい4月から春シーズンの始まる欧州主要国のクラシックは、2歳戦はともかく、シーズンが始まったらひとたたきするくらいで全能力を出せる適応力がないと、クラシックとは無縁である。

 アドミラブルは、まだ条件賞金900万の2勝馬。騎乗するMデムーロ騎手は、あくまで噂だが、皐月賞2着のペルシアンナイトではなく、もうすでに日本ダービーではアドミラブルに乗ることになるのではないか、とささやかれている。

 相手本線は、重心の低い体型でちょっとズブく、日本向きのスピード能力に欠ける死角はあるが、東京2400mになってここがもう6戦目のベストアプローチ(父ニューアプローチは、ガリレオ産駒の英ダービー馬)に魅力がある。ニューアプローチは2歳戦の初めから出走し、英ダービーに出走したときは7戦【5-2-0-0】だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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