◆見方を変えると、もっといい道が見えてくる
どれだけ手の内に入れていたか、それは戦い方にあらわれる。自在にものの見方を変えられる心の広さに通じると言ってもいい。何ごとも一つに執着してばかりいないで、ちょっと視野を変えてみる。それで悪ければ、また見方を変えればいい。そのうちに、もっといい道が見えてくる。模索する価値は、そういうところにある。
だが、視野を変えてみるといっても、それまでにどれだけの経験を積んできたかで違ってくる。時には無理を通そうとしてゆきづまったことがあったり、力づくで動かそうとして身動きがとれなくなったことがあったりと、それらすべてがよき力となっている筈なのだ。
キャリアは、無駄なことではない、それを確信して、新しい道を見つけていきたい。
夏の重賞には、こういう要素がふんだんに盛り込まれている。どこに視点をおくかでレースの見方は変わってくるが、どう受けとめるかを模索するのも、この時期の競馬の味わい方になっている。
想定外のスタートになってしまった中京記念のウインガニオンは、ここ2戦の逃げるというかたちにはならなかった。押して押して2番手だったが、それでも先頭からは離れていたので、焦らず自分のリズムを守ることができた。外差しが目立つコースになっていても、前のレースで最内から逃げ切るシーンを見て、それならとずっと内を走らせていて、4角を回るころには、それほど追ってもいないのに先頭に立つかたちになっていたのだ。
昨夏から主戦を務める津村明秀騎手は、ウインガニオンが思った以上に地力をつけ、成長していることを実感したが、それもこれもオープン入りしてからの経験が力になっていたからで、逃げに執着せず勝利できた成果は大きい。父ステイゴールドの我慢強さも見えていた。
函館2歳ステークスを勝ったカシアスは、まだまだこれから試練が待っている馬。3戦目というキャリアを上手に生かしてひとつステップアップできたというところ。ものの見方を変えるというより、先を見据えて一戦一戦積み上げていく立場で、今なにをつかんでいるかを観察していきたい。