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岡部幸雄騎手の引退

  • 2005年03月23日(水) 12時08分
 岡部幸雄騎手の引退で、ひとつの時代が終わった感を強くしました。これで馬券を買いはじめた頃の騎手は一人もいなくなったと、友人は語っています。1967年から38年間、受けた印象は、ただひたすら騎手の道を極める年月を積み重ねていったということです。馬優先主義、岡部さんの言葉を借りれば、人間サイドの欲望で馬を壊さないで上手に走らせること。一回故障すると以前のように戻すのが大変だし、馬の一生にとってプラスにはならない。我々の仕事は、上手に最後まで走らせることと、そういうことです。騎手の最高峰に立ち、ある種の境地に達していたといつも見ていました。

 タイキシャトルが大ブレイクする直前の頃でしたが、長く騎乗し続けていることについて、自分の仕事というか、これしかできないという思いで、馬から下りたらただのおっさんにすぎないよと語っていました。この先岡部さんがどう騎手としてあり続けるかは十分に想像できたし、最後まで騎手人生を全うするだろうという予感もしました。

 引退発表をどのようなかたちでするか、これは本人よりもJRAの方が気を使い、それがあの記者会見になりました。数日前から司会のためにからだを空けておくように言われていたので、早くから知っていました。そして最後の引退セレモニー、これはワイド中継の仕事とのギリギリのやり繰りをして、あの中山のパドックに立ちました。

 これまで、加賀武見さん、増沢末夫さん、嶋田功さん、野平祐二さんなど名騎手の引退式の進行をさせてもらいましたが、岡部さんの引退セレモニーは、これまでにない新しい演出がなされ、これからの在り方を示したものとなったと思いました。ファンの方々との一体感、岡部さんの思いとみなさんの思いとが見事にかよい合い、感動的でした。騎手道を究めたその姿からは、その枠を越えた人間道がどうあるべきかも示していたと思います。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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