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天皇賞・春

  • 2005年05月02日(月) 12時54分
 混戦がささやかれたのは、信頼できる長距離型が不在だったこと。また、自力で3200mのスタミナ勝負に持ち込めるようなステイヤーの資質を備えた馬がいないことだったが、予想通りの大波乱に終わった。前半1分40秒0=後半1分36秒6の全体の流れはスロー。自分のペースを崩さず、途中でシルクフェイマスにハナを譲りながらも最後の直線、もう一度先頭に立って粘ったビッグゴールドは立派。とても7歳馬とは思えない今季の充実ぶりだが、スローで先行して粘りこんだだけのビッグゴールドを捕らえたのは、巧みにインで折り合いをつけたスズカマンボだけ。他の注目馬は前半から引っかかったり、後方でタメ込んで上がり34秒台の流れで脚を余す形になったりで、好走した馬以外は不完全燃焼に近い3200mのG1だった。

 03年の勝ち馬ヒシミラクルは、前半から掛かってしまった。長距離G1の勝ち馬は日本馬ではこの馬だけ。同馬が好位追走の形になったことで一段とペースが落ち着いてしまったのだろう。失速は情けなかった。カリカリする気性が出てきたので、2月以来のぶっつけになったが、長距離型が掛かってリズムを欠いてはどうしようもない。シルクフェイマスは不得手の雨に祟られてしまった。とはいえ、重馬場というほどでもなく、少しすべる程度。このペースで逃げ、18着というのは重の巧拙ではないような気もする。昨年のG1での連続好走が信じられないほどで、どうなってしまったのだろう。

 スズカマンボは中団のインでスタミナ温存の好騎乗。コース取りも絶妙だった。牝系ファミリーはダンシングキイなどと同じ一族で、改めてこの牝系のスタミナを示したともいえる。やっと4歳世代が巻き返してきた。

 豪のマカイビーディーヴァは、馬場が合わなかったというが、アドマイヤグルーヴ(まるで長距離不向き)をマークしたようなレース運びだった。リンカーンも同じ。

 折り合って自分の力を出し切ることだけをテーマにできた伏兵と違って、人気馬だから当然だが、マークする馬を作ってしまった失敗があった気もする。

 昨年に続き、スローで不完全燃焼の馬が多い3200mが続くと、長距離G1の存在価値が問われたりする危険も生じるのは残念で、3200mを走って上がり34秒台の決着になり、脚を余した印象も濃い馬が多いのは、G1だけに少々物足りなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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