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エース候補だった2頭は足踏み状態だが 音無厩舎第3の牡馬たちブレーク!?/吉田竜作マル秘週報

  • 2018年02月21日(水) 18時00分


◆名牝ブエナビスタもエース級の評価をされていなかった

 若駒の「目利き」は本当に難しい。何を今さらと思われるだろうが、目下のところ、アテが外れ続けている現3歳世代に対しては、そう痛感せずにはいられない。

 特に担当の音無キュウ舎の3歳世代は、質量ともに“かつてない”ラインアップ…のはずだった。1つ上の世代のアドミラブルが日本ダービーで1番人気3着に敗れた時も「次の世代こそが、ダービーを勝つんじゃないか」と担当記者同士で盛り上がっていたくらいだ。

 その中でも牡馬ナンバーワンの呼び声が高かったのは、ディープインパクト産駒のダノンマジェスティだったが、きさらぎ賞では1番人気に支持されながらも9着に惨敗。新馬戦圧勝時にも見せた外に逃げる悪癖が直らず、現状はダービー一本に絞る「綱渡りローテ」にかけるしかなくなった。一方、牝馬のエースとして期待の大きかったミッキーアイルの全妹スターリーステージも現状は1勝に甘んじており、桜花賞に向けて、もう一つも落とせない状況に追い込まれている。

 完全な見込み違い? ふと記憶がよみがえったのは、かつての名伯楽・松田博調教師が率いた“銀河系世代”だ。2006年に3歳を迎えたこの世代のエースと目されたのは名牝ベガの4番子キャプテンベガ。最近の競馬ファンにはピンとこないかもしれないが、「父サンデーサイレンス×トニービン肌の名牝」は“鉄板”といっていい配合だったが…。最終的にはオープンまで出世したものの、重賞タイトルとは無縁に終わっている。

 この世代を実際にリードしたのは、POGシーズンの取材では、いわゆる「早熟性」を評価されていたにすぎなかったアドマイヤムーンとドリームパスポートの2頭だった。社台グループからの絶大な信頼を受け、早い段階から若駒を見続けてきた名伯楽でも、デビュー後の見通しにかなりのズレが出たことに、当時はかなりショックを受けていたものだ。

 キャプテンベガの競走生活を振り返って、松田博調教師は、こう口にしたことがある。

「生まれた時から期待の大きい馬は、牧場の人間の扱い方も当然、違ってくる。生き物は、ただ大事にすればいいというものでもないし、この馬の少しひ弱いところは、そういった面も影響していたのかもしれない」

 ちなみに、松田博キュウ舎で活躍したGI6勝の名牝ブエナビスタは、意外にも「牧場でも注目されていなかったし、実際に目立ってもいなかった」。そう、エース級の評価をされていた馬ではなく、別の馬たちによって“キュウ舎の当たり世代”が形成されるケースも、決して少なくはないのだ。

 そうなると、音無キュウ舎の現3歳世代も“第3の男たち”に、より注目すべきか。まずは日曜(25日)阪神のすみれS(オープン、芝内2200メートル)にエントリーしているディープインパクト産駒シエラネバダ。この中間は脇の筋肉痛で一頓挫あり、回復に時間を要すると思われたが、「1か月もたたないうちに治まった」(音無調教師)。その超回復力があったからこそ「スタミナ勝負になるこの舞台は合うはずだし、間に合ったのは大きい」。まずは未勝利戦(阪神芝内2000メートル)に続く連勝を決めて、クラシック路線に乗ってほしい。

 もう一頭はインディチャンプ。ステイゴールド産駒ながら「馬体が詰まっているから、短いところへ」との指揮官の判断で、クラシックとは無縁に見える阪神芝内1400メートルでのデビュー。この新馬戦に続き、500万下(京都芝内1600メートル)では、上がり最速の33秒8という切れ味でV2を飾ったことで「後ろから行って、あれだけの脚を使えたのは大きいね。ダービーを目指したくなる」とトレーナーの評価も大きく変わった。こちらはGIII毎日杯(3月24日=阪神芝外1800メートル)が進路を決める一戦になる。

 デビュー前と後の評価は全くの別もの。音無キュウ舎の“第3の男たち”が路線に乗ってくれば、牡馬クラシックは、より盛り上がることになるだろう。

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