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北半球の2歳セールで見られる「スキャットダディ特需」

  • 2018年05月16日(水) 12時00分


◆日本でも産駒が馬名登録されており楽しみ

 北半球における2歳トレーニングセール・サーキットも終盤に差し掛かっているが、ここまでのマーケットで見られた顕著な特徴の1つが、「スキャットダディ特需」であろう。

 12日(土曜日)にフランスのドーヴィルで、仏国における主要2歳市場のアルカナ5月ブリーズアップセールが開催されたが、82万5千ユーロ(約1億800万円)の最高価格で購買された母ミスアメリカバーティの牡馬をはじめ、高額馬上位10頭のうち4頭がスキャットダディ産駒だった。

 この傾向が更に顕著だったのが、4月17日・18日の両日にわたって英国のニューマーケットで開催されたタタソールズ・クレイヴン2歳ブリーズアップセールで、90万ギニー(当時のレートで約1億4364万円)の最高価格で購買された母マデラダンサーの牡馬を筆頭に、高額馬上位3頭が全てスキャットダディ産駒で、9番目の高値も同馬の産駒だったから、ここもアルカナ同様に高額馬上位10頭の中に4頭のスキャットダディ産駒が名を連ねていたことになる。

 北米でも、3月28日のファシグティプトン・ガルフストリーム2歳セールで、セール3番目の高値となる100万ドル(当時のレートで約1億700万円)で購買された母リスキーレイシェルの牡馬や、3月13日・14日の両日にわたって開催されたOBSマーチセールで、87万5千ドル(当時のレートで約9363万円)のセール最高価格で購買された母アキュゼイションの牝馬が、スキャットダディ産駒であったから、その需要の高さは沸騰と呼んで差し支えない水準であった。

 読者の皆様の多くが御存知のことと思うが、スキャットダディは2015年12月に11歳の若さで急逝。今年の2歳がラストクロップとなるのだ。

 繁殖牝馬ラヴスタイル(その父ミスタープロスペクター)の2番仔として、2004年5月11日にケンタッキーで生まれたのがスキャットダディである。父は、2001年に欧米両大陸で2歳チャンピオンとなったヨハネスブルグで、スキャットダディの世代が初年度産駒だった。スキャットダディの母は未出走だったが、祖母ライカブルスタイル(その父ニジンスキー)はG1ラスヴァージネスS(d8F)をはじめ3重賞を制した活躍馬だった。

 キーンランド9月1歳市場に上場され、馬主ジェームス・スキャチュオーチオ氏の代理を務めたトッド・プレッチャー調教師に25万ドルで購買されている。スキャチュオーチオ氏が75%を所有し、残りの25%をプレッチャー師とその父ジェイジェイ・プレッチャー氏が持つパートナーシップの所有馬として、2歳6月にデビューしたスキャットダディは、ベルモントパークのメイドン(d5.5F),サラトガのG2サンフォードS(d6F)を連勝。続くサラトガのG1ホープフルS(d7F)でも2着に健闘した。

 この段階で、クールモアのシンジケートメンバーであるマイケル・テイバー氏が同馬の買収に動き、プレッチャー親子の持ち分全部と、スキャチュオーチオ氏の持ち分の3分の1を取得。スキャチュオーチオ氏とテイバー氏が50%ずつの所有者となって迎えたのが、ベルモントパークのG1シャンパンS(d8F)で、ここを見事に制してG1勝ち馬となっている。

 スキャットダディは3歳3月のG1フロリダダービー(d9F)で2度目のG1制覇を果たしたが、G1ケンタッキーダービー(d10F)では18着に大敗。その後、屈腱炎を発症し、現役を退くことになった。

 2008年春にケンタッキーのアシュフォードスタッドで種牡馬入り、初年度の種付け料は3万ドルだった。2008年の後半にはオーストラリアにシャトルされた他、2009年から2011年にはチリにシャトルされている。

 初年度産駒から、G1アメリカンオークスやG1デルマーオークスを制したレディオヴシャムロックが登場したが、種牡馬として最初にブレークしたのはチリで、現地における初年度産駒から、2歳牡馬チャンピオンのエルブロミスタや、年度代表馬のソラリアらが出現。その後に北半球でも、仏国で2歳牡馬チャンピオンとなったノーネイネヴァーらが現れ、トップサイヤーの地位を確立している。

 2015年の2歳世代から、北米でG1フリゼットS勝ち馬ニックネイム、欧州で3歳以上の馬たちに交じってG1ナンソープSで2着となったアカプルコらが現れ、翌年の種付け料が10万ドルになることが発表された直後に訪れたのが、スキャットダディの急死で、関係者はもとより馬産界は大きな衝撃を受けることになった。

 産駒の活躍は、彼の死後に更に加速。2016年の2歳世代から、G1フェニックスSやG1コモンウェルスCを制したカラヴァッジョ、G1モルニー賞やG1キングズスタンドSを制したレディオーレリアらが出現。更に大爆発したのが2017年の2歳世代で、8月にスーネイションがG1フェニックスSを、11月にメンデルスゾーンがG1BCジュヴェナイルターフを制覇。

 このうちメンデルスゾーンは今年3月にドバイのG2UAEダービーを18.1/2馬身差で制してG1ケンタッキーダービーに駒を進めたのだが、この馬を含めてスキャットダディは今年のケンタッキーダービーに、なんと4頭もの産駒を送り込んでおり、このうちG1サンタアニタダービーを含めて3戦無敗の成績を挙げての参戦だったジャスティファイが、1番人気に応えて見事に優勝を果たしている。

 この後、5月21日・22日にメリーランドで行われるファシグティプトン・ミッドランティック2歳セールには、残念ながらスキャットダディ産駒の上場はないが、5月24日・25日に愛国で行われるゴレスブリッジ2歳セールには、父スキャットダディ・母アクリスクイーンの牝馬が、上場番号125番としてスタンバイしており、果たしてどんな価格で購買されるか、注目が集まっている。

 また日本では、昨年8月のファシグティプトン・サラトガ8月1歳市場にて34万ドルで購買された、父スキャットダディ・母ニミューの2歳牝馬が、スポーカンテソーロという馬名で登録されている。同馬がどんなパフォーマンスを見せるかも、おおいに楽しみである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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