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北海道市場、セレクションセール

  • 2005年07月19日(火) 20時37分
 ノーザンホースパークにて開催された「セレクトセール2005」から一週間後。静内に会場を移し「北海道市場、セレクションセール」が7月18日と19日の2日間にわたって開催された。

 18日はどんよりと曇り、時折雷の鳴るあいにくの空模様だったが、当歳馬178頭(欠場17頭)が上場され、62頭が落札、売上げは7億4240万2500円(税込み)を記録した。売却率は34.8%。

 前週と同様、市場の模様はグリーンチャンネルにて放映されたので、ご覧になった方も多いだろう。ある程度予想されたこととはいえ、前週の「セレクトセール」と比較すると、こうも売れ行きが違うものか、と愕然としてしまう。玉石混交ではあっても、日高ではそれなりに各牧場にとっての「主力選手」級を揃えての上場だったはずなのだが、どうもこの数字では、市場の名前こそ酷似しているが、「似て非なるもの」と言わざるを得ない。

 余談ながら東京の友人より市場の最中に電話がかかってきた。「ずいぶん売れてるね。日高も景気が戻って来たの?」「えっ?」「だってさ、出て来る馬、みんな売れてんじゃん」「そうか、そう見えるか」「えっ?売れてないの?」「だいたい三分の一くらいだよ」「まさか。鑑定人が1頭残らず『***番のお客様、ご購買ありがとうございました』って言ってるけどなぁ。これは要するに売れたってことだろ?主取りの時には『ご購買ありがとう』なんてわざわざ言うわけないだろうに」「……」「なんでそんな演技をするわけ?」返答に窮した。

 確かに、市場の模様をテレビで見ていると、どの馬にも声がかかり、いかにも落札されたかのごとき光景に映る。まず上場馬が登場すると、番号と馬名(血統名、○○○の2005など)、誕生日や父母の名前、毛色などが紹介され、続いて鑑定人が「お台は?」と場内に告げる。売れる馬はすぐさま「***万」と声がかかるが、鑑定人が何度か「お台は?」と繰り返したところで、ようやく場内脇にあるポケットにいる係員から「***万」と声がかけられた時にはだいたい「主取り」のケースである。

 場内で見ていると分かるのだが、誰も競りかけていない(と思われる)のに、場内脇にあるポケットから50万円単位で価格を吊り上げる係員の声が聞こえる。例えば500万円よりスタートしたとすると、場内はシーンと静まり返っているのに、場内脇のポケットから「はい!550万円」「はい!600万円」といった具合に価格が上昇して行くのである。

 鑑定人はそれを聞きながら場内の客に向かって「550万円頂きます」「600万円の上、ありませんか?」などと告げ、最後にもう一度「ラストコール、600万円の上ありませんか?」と確認した後、ハンマーを叩く。傍目には誰かが落札したように映るのだが、実はこれは販売申込者がリザーブ価格まで競り上げているのである。しかし、すぐ鑑定人が「600万円、***番のお客様、ご購買ありがとうございました」と告げるため、見ていると本当に売れたように聞こえるのだ。

 1頭ずつこうしたやりとりを繰り返していたため、ついに当歳の市場は12時開始だったにもかかわらず午後7時になってもまだ上場馬が残っており、グリーンチャンネル放映時間内に終了できなかった。

 この「全馬が落札されたように見える」市場運営には、それなりの理由や事情があるのかも知れぬ、とは思う。しかし、真っ暗になるまで時間をかけて、結果的に売却率は34.8%と低迷したことを考えると、果たしてこの方法が多くの人々に支持されていたかどうかは疑問だ。時間がかかってしまった原因は、紛れもなく「全馬が落札されたように見える」進行のあり方によるところが大きい。

 さて、翌19日は1歳のセレクションセールが開催中だが、これを書いている今(午後7時)も進行中である。昨日の当歳よりもさらに時間がかかっており、最終的にセリが終わるのは午後8時を回ってしまうのではなかろうか。もちろんグリーンチャンネルの放送時間内には終わっていない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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