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北海道、岩手で連勝の注目馬

  • 2018年10月23日(火) 18時00分

山本聡哉騎手「勝った瞬間、鳥肌が立ちました」


 先週はお休みをいただいてしまい、申し訳ありませんでした。

 さて、この1週間では印象的なレースが2つあった。

 まずひとつは、17日に門別で行われた瑞穂賞。6頭立てのところ、おそらく出走していれば3番人気だったであろうタービランスが出走取消となって5頭立て。少頭数となったのは、馬連複で1.1倍という人気を集めた2頭、ハッピースプリント、スーパーステションが出走したからと思われる。実際に、翌日組まれていた同じ1800mの特別戦は、瑞穂賞を避けたと思われるようなメンバーだった。

『両雄並び立たず』という言葉があるが、まさにそのとおり人気を集めた2頭は明暗が分かれる結果となった。

 今シーズン門別でここまで重賞のみを4戦して全勝のスーパーステションが逃げ、南関東から戻って5カ月ぶりの復帰初戦を快勝していたハッピースプリントがぴたりと追走。3コーナーあたりまでは、やはり人気2頭の一騎打ちかに思われた。ところが3、4コーナー中間からハッピースプリントの鞍上の手が動き始め、ムチも入っていた。4コーナーから後続を引き離しにかかったスーパーステションが2着に大差をつけて圧勝。一方のハッピースプリントはまったく粘りがきかず4着に沈んでしまった。

 勝ったスーパーステションは、門別の重賞を5連勝。これでシーズン最終日に行われる道営記念も制すると、現在門別で行われている1600m以上の古馬重賞(牝馬限定戦は除く)を同一年に完全制覇となる。

 ホッカイドウ競馬は2010年に門別単独開催となって以降でも、2011年にコスモバルク記念が新設、2014年限りでステイヤーズCが廃止となるなど古馬重賞路線は変更されてきているが、2000年以降だけを見ても、1シーズンを通して古馬戦線でこれほど勝ちまくった馬はいない。

 昨年までこの路線の中心的存在だったオヤコダカでも、一昨年、昨年と1600m以上の古馬重賞6戦のうち4勝までだった。

 スーパーステションは、昨年3歳時にも王冠賞、ダービーグランプリ(水沢)を制していたが、冬の間移籍していた南関東では2戦して結果を残せず。しかし今シーズン門別に戻ってからは一戦一戦確実に力をつけた。重賞5連勝での2着馬との着差が、クビ、4馬身、7馬身、4馬身、そして瑞穂賞が大差ということでもそれがわかる。

「北海道にいるからには道営記念が頂点だと思っているので、そこに向けて、いかにいい状態で出せるかというのを心がけていきたいと思います」と瑞穂賞のレース後に話していた角川秀樹調教師だが、これだけ能力が突出していると、見ている者としてはどうしても“その先”を期待してしまう。まったく個人的な希望だが、中央から一線級の参戦が少ない、12月の名古屋グランプリあたりどうだろうか。

 そしてもうひとつ印象的だったレースは、21日に盛岡で行われた岩手3歳の二冠目、不来方賞。単勝1.3倍のチャイヤプーンに、3.3倍のサンエイキャピタル、馬連複では1.6倍という、こちらは両雄が並び立って、3着馬に8馬身差をつける一騎打ちだった。

 逃げてペースを握ったのは、デビューから負けなし4連勝中のサンエイキャピタル。一方、一冠目の岩手ダービーダイヤモンドCを制し、一時的に移籍していた南関東で戸塚記念を勝って岩手に戻ってきたチャイヤプーンは、中団から徐々に位置取りを上げ、4コーナーでサンエイキャピタルに並びかけた。

 直線は馬体を併せての追い比べ。追いかける立場だったチャイヤプーンの勢いが完全に勝っていたが、ゴール前、サンエイキャピタルが差し返してクビ差先着を果たした。

喜怒哀楽

チャイヤプーンとの一騎打ちを制したサンエイキャピタル(提供:岩手県競馬組合)


 サンエイキャピタルは、これが2度目のびっくり。1度目は、デビューして2戦目のウイナーC。2歳時に盛岡・芝の新馬戦を勝ったサンエイキャピタルだが、その後脚部不安があって11カ月ぶりの復帰戦となったのが水沢ダートのウイナーC。馬体重も18kg増えていて、8番人気は臨戦過程を考えれば妥当な評価に思えた。スタートで出負けし後方からとなり、しかし抜群の手ごたえで大外から位置取りを上げてくると、前を行く馬たちをまとめて差し切った。

 今回、サンエイキャピタルはここまで負けていないとはいえ、戦ってきた相手は必ずしも一線級とはいえず、しかも初めての2000m戦。しかも相手が南関東で重賞を制したという実績なら、3.3倍と1.3倍というオッズも妥当なもの。個人的な見方としては、むしろサンエイキャピタルの3.3倍は人気を集めすぎとも思えた。

 しかし、その人気とは逆の結果。今回からサンエイキャピタルの手綱をとることになった岩手リーディング・トップの山本聡哉騎手は、「直線で一旦交わされましたが、根性を出してまた差し返してくれた。こんな経験は今までなかったから、勝った瞬間、鳥肌が立ちました」と語ったほど。

 次走は当然、地方全国交流のダービーグランプリ(水沢)となるのだろう。他地区からどんなメンバーが遠征してくるかだが、クビ差で屈したチャイヤプーンともども注目となることは間違いない。

 北海道のスーパーステション、岩手のサンエイキャピタル、ともに“あっぱれ”なレースぶりといえよう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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