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【無料】堂々とチャンピオンの走りをみせてくれた/金鯱賞

  • 2019年03月11日(月) 18時00分

一気に古馬中距離戦線の主役へ


 ノーワン(父ハーツクライ)とプールヴィル(父ルアーヴル)が、レース史上初の1着同着となった桜トライアルのFレビューも、ルガールカルム(父ロードカナロア)の勝った桜トライアルのアネモネSも見どころはあったが、GI馬5頭の対決となった古馬の「金鯱賞」はさすがに迫力で断然上回った。

 あふれる素質をまざまざと見せつけた4歳牡馬ダノンプレミアム(父ディープインパクト)はこれで6戦5勝。なんとか間に合った昨18年の日本ダービーこそ6着(0秒2差)にとどまったが、長引いた爪の不安を乗り越え、今回の勝利は初の古馬相手に9カ月半の休養明けでの完勝。GI大阪杯の最有力候補の1頭となると同時に、一気に古馬中距離路線の主役に躍り出た。

 長期休み明けとあって、パドックから本馬場入場時の気負いは心配された以上に激しかった。気負いというよりイレ込みに近い状態で、能力全開に支障をきたすのではないかと映るほどだったが、一転、レースはチャンピオンの走りだった。

 一番の好スタートから、当然のように好位のイン3,4番手におさまると、直後にいた5歳ペルシアンナイト(父ハービンジャー)が行きたがって折り合いを欠いているのに対し、あれだけ気負っていたダノンプレミアムはたちまち自分のリズムになった。

 2歳時の朝日杯FSでも、最内1番からそっくり同じような位置を確保して勝った。約3カ月の休み明けだった日本ダービーでもやっぱり最内の1番枠から、一番の好スタートでインの3番手キープだった。そして今回も…。キタサンブラックがある時期、毎回のように1番枠を引いたが、ダノンプレミアムは6戦中4回まで1枠(枠順)を引いている。抜群のレースセンスに加え(最初からすごく頭のいい馬とされた)、こういう引きの強さまで合わせ持っているのだろうか。

 レースの流れは稍重の芝で「61秒0-59秒1」=2分00秒1。馬場を考えればスローというほどでもないが、ダノンプレミアムの推定1000m通過は61秒8前後。落ち着いた楽なペースの3番手から、最速タイの上がり34秒1-11秒7で抜け出した内容は、ゴール前で食い下がってきたリスグラシュー(父ハーツクライ)以外のGI馬とは、ちょっと(歩んできた過程が異なるだけに)ランクが違う印象を与えた。

 ダノンプレミアムの母の父は、15年の日本ダービーでドゥラメンテの2着したサトノラーゼンと同じインティカブ(その父レッドランサム)。母方からみてこなせる距離の幅は広いと想像できるが、ダノンプレミアムはやや寸詰まりにも映る迫力満点の身体つき。おそらく2000m前後がベストか。もちろんマイルはOK。反動がなければ大阪杯から、やがて天皇賞(秋)と続く路線の主役になってくれるだろう。

重賞レース回顧

あふれる素質をまざまざと見せつけた4歳牡馬ダノンプレミアム(撮影:高橋正和)


 5歳リスグラシューは、完成された古馬牝馬として昨秋のエリザベス女王杯につづくGI2勝目が見えた。ここまで【4-8-3-3】。3歳時までは430キロ前後の細身の馬体も影響し、崩れないが勝ちみに遅いタイプだったが、最近の2着は詰めが甘いわけではなく、あくまで相手との力関係。現在は460キロ前後で安定している。ただ、近走は「M.デムーロ…J.モレイラ…A.シュタルケ…」と厳しく追える外国人騎手とのコンビなので、鞍上には注文がつくかもしれない。香港に遠征予定。

 5頭のGI馬を押さえて1番人気に支持されたエアウィンザー(父キングカメハメハ)は、一段と素晴らしい馬体に成長していた。中位のインで勝ったダノンプレミアムをマークする形になったが、同じような上がり(34秒2)で差が詰まらずの3着。

 3歳春の共同通信杯を別にすると、初めてトップクラスとの対戦だから仕方がないともいえるが、本当はダノンプレミアムの位置で挑戦者らしく、チャレンジCと同じような積極的なレースをしたかったのが、武豊騎手や、陣営の展望だったように思える。出足もう一歩だったため、最初の1コーナーで少し引くように控えて中位になったのが痛かった。もともとそう切れるタイプではない。

 前半かかり気味になったペルシアンナイトは、3着馬から2馬身半差の4着はかなり不本意だが、昨年も春の始動戦は中山記念を物足りない5着(1番人気)。次の大阪杯では一変してスワーヴリチャードの2着している。新馬戦を別にすると、これで3カ月以上の休み明けは【0-0-0-4】。4回ともに支持を下回ってしまった。入念に乗っても休み明けは走らないタイプなのだろう。

 アルアイン(父ディープインパクト)は、北村友一騎手の前日の落馬負傷で急な乗り替わり(テン乗り)。レースの形ができているオープン馬への突然の乗り替わりはつらいところがあり、ましてGIをにらんだ叩き台のレース。表現は適切ではないかもしれないが、柴山雄一騎手は、好きなように勝手に乗るわけにはいかない。

 タニノフランケル(父フランケル)は力試しだけに、もう少し果敢に行きたかったが、行く一手とはいえもともと難しい馬であり、強気に乗れなかったか。

 モズカッチャン(父ハービンジャー)は、そう重めには映らなかったがプラス14キロで初の500キロ。これで2カ月以上間隔が空いた場合は【0-0-2-4】。次走の変わり身に期待したい。大阪杯予定とされる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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