牡馬に比べるとトップクラスの牝馬は、その層が薄いのが一般的なパターン。したがって、レベルが低い場合はともかく、トップの牝馬がしっかりしていると、牝馬の方が勢力図の変動は少ないとされる。
今年の3歳牝馬の勢力図は、まさにそのパターン通りだろう。シーザリオは休養中だが、オークスでそのシーザリオと接戦のエアメサイアと、桜花賞→NHKマイルCを連勝しているラインクラフトが出走してきた。伏兵らしき馬がいないこともなかったが(サンレイジャスパー)、人気はトップの2頭に集中し、結果もマッチレースだった。
レースの流れは前後半が(61.0-59.1秒)のスロー。先行して流れに乗ったラインクラフトは、距離の2000mにメドを立てたい。こなせることを確信したいというのが最大のテーマだった。だから、スローの流れに身を任せたまま、ゴール寸前の競り合いに持ち込むのは本意ではない。エアメサイア以下に、徹底したマークを受けるのを承知で早めにスパートした。1000m通過が61.0秒のスローで、先頭に立ち掛けた1600m通過地点が1分36秒7。無理のないペースで一気のスパート(その1ハロン11.2秒)は、正攻法で押したいラインクラフトが2000mにメドを立てるために、理想の流れだったともいえる。上がりを34.8秒でまとめ、このスローながら2分00秒2で乗り切ったのだから、期待通りだった。秋華賞に向けて最高のステップだっただろう。バテていない。
当面の相手が正攻法で押し、早めにスパートしてくれたのだから、マークしていたエアメサイアには理想の展開。一歩ずつ差を詰め、ゴール寸前で計ったように差し切った。馬体がひと回り成長し、迫力を増したように見えた追い切りからすると、マイナス8キロの462kgはちょっと仕上がりすぎの気もしたが、ラインクラフトのスパートを見つつ、これをキチッと差したのだから、こちらも理想のステップ。
別路線から加わってくる馬はいるが、シーザリオ不在となると、この2頭の秋華賞での好走(勝ち負け)はもう必至だろう。レースの流れは異なるだろうが、2頭から3馬身半以上も離された今回の相手が、本番で逆転台頭は極めて難しい。伏兵は別路線にいる。