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かかえる死角は大きいが大半が1勝馬、不可能はない/フローラS

  • 2019年04月20日(土) 18時00分

本番での好走もしだいに増えている、フローラS出走馬


 オークスまでにトライアルを含め大半が10戦くらいしていた時代は別に、近年のトライアルとオークスの結びつきは薄かった。ところが、最近30年間のフローラS2000m(旧4歳牝馬特別)出走組のオークスの成績は、

 1989年から10年「1着1頭…2着1頭…3着2頭」=4頭
 1999年から10年「1着1頭…2着2頭…3着2頭」=5頭
 2009年から10年「1着1頭…2着4頭…3着4頭」=9頭

 ここへきて、フローラS出走馬の好走がしだいに増えている。距離適性を重視する傾向が強まったこと、大手生産牧場の使い分けも関係する。とくに桜花賞を圧勝したグランアレグリアが回避を発表している今年は、フローラS組の本番での評価は一段と高くなる可能性がある。

 伏兵セラピア(父オルフェーヴル)はまだ1戦1勝馬。阪神1800mを経験馬相手に抜け出したとはいえ、全体時計は平凡な1分49秒9。自身の上がり33秒3(推定11秒1-10秒8-11秒4)は、馬なりに近い内容で鮮烈だったものの、このオークストライアルを2戦目に制した馬はいない。

 かかえる死角は大きい。とりわけオークストライアルの文字が躍るので至難に映るが、逆に大半が1勝馬の2000m重賞と考えれば不可能ではない。

 重要な3歳重賞では、15年の共同通信杯を勝ったリアルスティールが1戦1勝。18年のきさらぎ賞のサトノフェイバー、今年の京成杯のラストドラフトも同じ。

 毎日杯、フラワーC、アーリントンC、シンザン記念にも1戦1勝の勝ち馬が存在し、クイーンCには3頭もいる。88年の青葉賞(指定OP)のジュネーブシンボリ(1番人気4着)など、歴史を覆そうと初出走だった。グランアレグリア、サートゥルナーリアが2歳戦以来の桜花賞、皐月賞を勝つ時代である。1戦だけのキャリアは、これがオークスならともかく、フローラS2000mなら決定的な死角でもない。

 キャリアの浅い活躍馬というと、その代表格は1996年の日本ダービーを2戦2勝だけの戦歴で、かつ3月以来の休み明けで勝ったフサイチコンコルド。これには、その祖母サンプリンセスが、2戦未勝利のまま1983年の英オークスを12馬身の大差で勝ったという血統背景があった。仮にセラピアがフローラSを2着までに快走したりすると引き合いに出される記録だろうが、ここはオークスではなく、みんなキャリアの浅い3歳牝馬の2000m重賞。戦歴はそれほど重要ではないと思える。

 セラピアに芦毛を伝える母の父タピットは、2歳戦ではあったが2戦目に重賞を制している。その父プルピットも、さらにその父A.Pインディも決して短距離向きのスピード型でもないのに、早くから連勝を始めている。父オルフェーヴルはちょっと危ない天才型だが、新馬から4連勝(重賞3勝)した牝馬ラッキーライラックを送っている。皐月賞馬エポカドーロも完成は非常に早かった。

 先手を取りそうな人気のウィクトーリア(父ヴィクトワールピサ)は、戸崎騎手だけにあまり飛ばさないだろう。うまくマークして楽に追走できれば、1戦だけのセラピアにもチャンスは十二分にある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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