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大混戦模様のケンタッキーダービー

  • 2019年05月01日(水) 12時00分

見どころは名伯楽同士の激突


 4日(土曜日)に米国ケンタッキー州のチャーチルダウンズ競馬場で行われる第145回ケンタッキーダービーの展望をお届けしたい。

 日本から参戦のマスターフェンサー(牡3、父ジャスタウェイ)を含む、フルゲートの20頭立てで争われることになり、フロリダ州の前哨戦G1フロリダダービー(d9F)2着馬ボーディエクスプレス(牡3、父ボーディマイスター)、ケンタッキー州の前哨戦G2ブルーグラスS(d9F)3着馬シグナルマン(牡3、父ゼネラルクオータース)らが、ダービー出走権を巡る一連の前哨戦を通じて獲得した通算ポイントで上位20位に入ることが出来ず、除外となっている。

 ひと言で表せば「大混戦」模様となっているのが今年のケンタッキーダービーだ。

 そんな中、当日1番人気に推されるのは、昨年の全米2歳牡馬チャンピオンのゲイムウィナー(牡3、父キャンディライド)か、ダービーポイントが設定された最後の1戦となったG1アーカンソーダービー(d9F)を勝っての参戦となるオマハビーチ(牡3、父ウォーフロント)の、いずれかと見られている。

 勝てばケンタッキーダービー通算6勝目となり、歴代最多勝タイとなるボブ・バファートが管理するのがゲイムウィナーだ。

 2歳だった昨年は4戦し、G1BCジュヴェナイル(d8.5F)など3つのG1を含む無敗の4連勝をマーク。2歳シーズンが終わった段階では、同じ世代の牡馬の中では頭2つは抜けた存在と見られていたのがゲイムウィナーだった。

 当初、今季緒戦に予定されていたのは、3月9日にサンタアニタ競馬場で組まれていたG2サンフェリペS(d8.5F)だったのだが、レース中や調教中の事故が多発したため開催そのものが中止となり、方向転換を余儀なくされることになった。サンタアニタの馬場が閉鎖されたため、ロスアラミトス競馬場に輸送して追い切りが行われた上で出走したのが、3月16日にアーカンソー州のオークローンパークで行われたG2レベルS・分割2(d8.5F)で、そこが重賞初挑戦だったオハマビーチの2着に敗れて連勝がストップ。

 開催が再開されたサンタアニタで4月6日に行われたG1サンタアニタダービー(d9F)でも、同厩のロードスター(牡3、父クオリティロード)の2着に敗れ、よもやの連敗を喫して大目標のケンタッキーダービーを迎えることになった。

 伯楽バファートがこの馬をいかに立て直すかが、今年のケンタッキーダービーを占う大きなポイントと言われてたのだが、4月26日(金曜日)にサンタアニタで1週前追い切りが行われて、7F=1分27秒0の時計をマークし、見守ったバファート師は、「Game Winner looked awesome, It was perfect.(素晴らしい動きで、完璧な調教だった)」と笑顔を見せた。調整過程に狂いが生じたものの、今季3戦目にしてようやく態勢が整ったとあれば、2歳チャンピオンの力が依然として一枚上と見る関係者は多い。

 一方、勝てば開業46年目にして初のケンタッキーダービー制覇となるリチャード・マンデラが管理するのがオマハビーチだ。

 マンデラ師と言えば、既に殿堂入りを果たしている北米競馬界における大御所だが、馬に無理な負担を絶対にかけないこと、仕上げは急がないことをポリシーとし、3歳春の3冠には全くこだわらない姿勢を貫いてきた調教師である。

 オマハビーチは、14年の全米2歳牝馬チャンピオン・テイクチャージブランディーの半弟という超良血馬だが、この馬とてデビュー当初は、マンデラ師の頭の中にケンタッキーダービーを目指す考えはなく、それが証拠に2歳時の同馬は芝のレースを3戦し、いずれも惜敗して未勝利のまま2歳シーズンを終えている。

 3歳になって、初めてダートのレースを試すことになり、サンタアニタのダート8Fのメイドンに出走して2着となった。そして次走、同じくサンタアニタで行われたダート7Fのメイドンを使ったところ、オマハビーチは惜敗続きだったそこまでの4戦とは見違える動きを見せ、後続に9馬身という大差をつけて快勝し、デビュー5戦目にして初勝利を手にすることになった。

 この競馬に意を強くした陣営は、同馬の次走に3月16日にアーカンソー州のオークローンパークで行われたG2レベルS・分割2(d8.5F)を選択、前述したように、ここにはゲイムウィナーが出走してきたのだが、なんと未勝利を勝ったばかりだったオマハビーチが、昨年の2歳牡馬チャンピオンを撃破し、重賞初挑戦初制覇を果たしたのである。

 オマハビーチは続いて、4月13日にオークローンパークで行われたG1アーカンソーダービー(d9F)に駒を進め、ここでもG1ロスアラミトスフューチュリティS(d8.5F)勝ち馬インプロバブル(牡3、父シティジップ、同馬を管理するのもボブ・バファート)を2着に退け、G1初制覇を果たしたのだった。

 この時オマハビーチの手綱をとったマイク・スミス騎手は、1週間前に行なわれたG1サンタアニタダービーでゲイムウィナーを破って優勝したロードスター(牡3、父クオリティロード、この馬もまた管理するのはボブ・バファート)の主戦も務めており、本番での騎乗馬にはロードスターを選択するというのが大方の見るところだったのだが、予測に反してマイク・スミスはケンタッキーダービーにおける騎乗馬にオマハビーチを指名。スミスの決断を受け、前売り市場におけるオマハビーチの人気が、更に上昇することになった。

 ゲイムウィナー vs オマハビーチというよりは、バファートvs マンデラという伯楽同士のぶつかり合いが、今年のケンタッキーダービーにおける最大と見どころとなっている。

 マスターフェンサーは、シカゴ経由で26日にケンタッキー州のキーンランド競馬場に到着。輸送は無難に乗り越えたと伝えられている。その後、29日の夜に決戦の地であるチャーチルダウンズに移動している。

 レイティング的には20頭中の最下位で、人気も全くないのだが、視野に入れていると言われる2冠目のG1プリークネスS(d9.5F),3冠目のG1ベルモントS(d12F)に向けて、展望の開ける競馬をしてくれることを願っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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