1周目の4コーナーを回るころにかかり気味になり(最終コーナーと察して加速しはじめた)、包まれる危険を承知でインに入れる形になったこと。スパートのタイミングが多少遅かったことなど、もしや…の危なっかしい場面もないではなかったが、無敗の3冠馬達成は期待通りだった。
3冠達成には強力なライバルがいないことも必要条件の1つとされるが、伏兵シャドウゲイトがペースメーカーとなり、アドマイヤジャパンが2番手。そうスローの流れではなく、前後半の1500mずつは〈1分34秒0=1分30秒6〉だった。横山典弘騎手の逃げ切ったセイウンスカイは〈1分31秒6=1分31秒6〉という破格の記録を持つが、今年のペースが近年のパターン。抜け出して3分04秒9で乗り切ったアドマイヤジャパンは、ローゼンクロイツ(3着)に4馬身の差をつけたように、ダービーのインティライミと同じで、普通の年なら文句なく勝ち馬のレベル。ディープインパクトの相手になったグループは、3冠を通して決してレベルは低くなかったことに、数字の裏付けもある。
ディープの上がりは33.3秒(レースの上がりは35.1秒)。この爆発力が最大の持ち味なのだから、これは納得で、強さを浮き立たせるが、長丁場で上がり33秒台前半は、かかる負担が(のちに)、活力のロスや脚部難につながることが多い。これからの海外遠征や、古馬相手のGIを展望すると、無事を保つために、もう少し早めにスパートできて、余力を残したい気もするが、これがディープインパクトの能力発揮にベストの形だと考えるなら、これはまだ3歳の7戦目のことなのだから、やむを得ないのだろう。
ディープインパクトがただ傑出した能力を持つだけでなく、独特のストライドや、楽々と33秒台のスピードを繰り出せるバネを考えると、単にサンデーサイレンスの最良の後継馬ではなく、のちに種牡馬となったとき、ディープインパクト自身が起点の種牡馬となれる可能性もある。馬体は決して目立つものではないあたりも、展望のスケールは大きく飛躍しすぎるが、ミスタープロスペクターや、ノーザンダンサー、ミルリーフ、もっと遠くナスルーラや、異質とされたザテトラークのように……。
無敗の3冠馬は、陣営も「真価発揮はこれから」の大展望をもつように、日本の3冠馬にとどまらず、祖代のサラブレットの世界の中のディープインパクトになってほしいものだ。広がる可能性は私たちだけが想像する以上に、もっと大きいかもしれない。
アドマイヤジャパンは体型から3000mは…とも思えたが、自分でレースを作って3分04秒9だから立派。弥生賞での首差の価値を再確認させたともいえる。素晴らしい状態にみえたシックスセンスは、四位騎手も「悔いが残る」という通りの、アドマイヤフジもそうだが、打倒インパクトのためにはディープインパクトより後方追走は物足りなかった。