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天皇賞・秋

  • 2005年10月31日(月) 13時01分
 ストーミーカフェがハナを奪い、タップダンスシチーが続き…の形は予想された通りだが、ストーミーカフェもただ飛ばすだけの伏兵ではなく進歩している。タップダンスシチーも強引に行く一時のタップダンスではない。

 予想外の流れが展開された。前半の1000m通過は62.4秒。前例のない超スローで、そこから一気にペースが上がったわけでもなく、1400m通過は1分26秒5。4コーナーからの上がり3ハロンが33.6秒。最後の直線だけのレースに持ち込まれた。前半62.4秒の超スローに流れた時点で、中団より後ろに位置したグループはすべて圏外。差し=追い込み一手型は上がり32秒台を記録しているが、テレグノシス、リンカーンなど、後方のままの14、15着だった。レースの流れはみんなの予想とは逆になることは再三だが、さすがにここまでの超スローは、すべての馬に予想外だろう。

 コースロスなく最内の好位にいたダンスインザムードが一気に抜け、好位の外から早めにスパートして地力を示し、上がり32.7秒を記録したゼンノロブロイが差し切るかと思えたが、最内からダンスインザムードと同じコースを通って伸びた牝馬ヘヴンリーロマンスが、ゴール寸前、鋭く抜け出していた。

 アサクサデンエン、スイープトウショウと続いたあたり、中身はマイル戦の、それも超スローの1600mに対する適性が出た形だった。

 この秋、10、9番人気、そして天皇賞を14番人気で快走のヘヴンリーロマンスは、牝馬とは思えないハードな追い切りをこなすなど絶好調だったが、爆発力でロブロイを差したのだから見事。インコースの利を最大限に生かす好騎乗が重なって、牝馬特有の一瞬の切れがフルに生きた。牝馬陣が1、3、5着を占めたあたりも、スローのマイル戦に近いような一瞬の切れ味勝負のレースになったことを示しているだろう。

 03年のように、先行型が前半1000mを56.9秒で猛烈と飛ばすレースがあったり、今回はそれより前半が「5.5秒」も遅いペースが成立したり、あまりレース展開(流れ)が大きな比重を占めないはずの中距離2000mだが、天皇賞(秋)になると、突然、一連のレースとはまったく別の流れになるところが、波乱の歴史の伝統なのだろう。

 有力馬を出走させる陣営が、その有力馬の力を引き出すためにペースメーカーを出走させる欧州型の中〜長距離G1は、個人的には相容れないものがあるが、長い歴史の中、ペースメーカーを出走させたくなる競馬があることも、たしかに理解できる気もする。レースの流れは、Hペース過ぎても、超スローでもレースがこわれた印象を与えるから、難しいものだ。
  
 適度というのは、本当は存在しないのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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