予測を大幅に上回るHペースの厳しい流れが展開された。前半45.7-57.1秒のペースはマイルCSでは珍しい高速の流れ。それもほぼ同様のペースで1分32秒6のレースレコード(アグネスデジタル)になった00年などと違って、先行して事実上のペースの主導権を握ったのはダイワメジャー。人気薄の逃げ馬が飛ばしたのではなく、実力馬が厳しい流れを作り出したのだから、能力不足の馬には苦しかった。上位4着までに入ったのは、3、4、2、5番人気の馬だった。だからレースレコードの1分32秒1。
まず、人気でただ1頭だけ8着にとどまったデュランダル。敗因はさまざまに分析されるだろうが、走破時計は自己最高の1分32秒5を記録し、上がりは33.2秒。デュランダル自身は必ずしも凡走したわけではない、と考えたい面もある。この馬、特異な追い込み馬で、1600mはもちろん、1200mでも前半の方が自身のラップは遅いという不思議な馬。だからこそ、爆発的に切れる印象があるが、本質はスプリンターにも近いマイラーなのだろう。多くのマイラー型が1800〜2000mでもそれなりの記録があるが、この馬は1200〜1600m限定。デュランダルは1分33秒0の自己最高記録で勝った昨年、上がりを45.5-33.7秒でまとめている。今年は1分32秒5で、自身の後半は44.5-33.2秒。それでも届かなかったのは、全体の時計が速すぎ、ライバルはだれもバテない。デュランダルも自己最高の形で伸びてはいるが、全体がハイペースで展開し、他馬が秘めていた能力を引き出される形になった中、この馬にはこれまでの記録を塗り替えるようなプラスアルファの部分がなかったということだろう。なぜか走らなかったのではなく、記録の上ではいつも以上に走ったが、それでも足りなかったという一面がある。デュランダルは1〜2Fに集約される切れ味勝負(21秒前後)型ともいえる。
このペースを先行し、1分32秒1のダイワメジャーは凄い。デュランダルには少しかわいそうだが、ダイワメジャーはマイルを4戦し、全て(コース問わずに)1分32秒台。マイラーとしてのスピード能力が違っていた。
ラインクラフトは古馬相手のここは苦戦とみていたが、力負けするどころか厳しい流れの中を伸びて1分32秒3。早くも来年の新設ヴィクトリアマイルの有力候補だろう。
ハットトリックは、これまで東京で上がり3F32秒台の息の長い末脚を爆発させたことが3回もある底力あふれる素質馬。その能力がフルに全開した。反応の鈍い同馬は、デュランダルのようにすぐにトップギアに入れないかわり、追い通し(今回は3角からペリエがスパートさせた)でも失速しない。天皇賞(秋)は待って脚を余したが、今回は自分からスパートしている。
好位のダンスインザムードはバテずに見せ場を作って1分32秒3。これも素晴らしい好内容としていい。