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ジャパンC

  • 2005年11月28日(月) 12時00分
 例年以上に流れは速くなり、厳しい東京2400mになることが予測されたが、2分22秒1の快レコードには驚くしかない。昨年のゼンノロブロイは2分24秒2で3馬身差の圧勝。芝の状態が今年の方がずっと良かったとはいえ、世界の国際GI・2400mの中で、有数の時計勝負が特徴のジャパンCらしい猛スピードのレースだった。レコードが記録されるような東京の天皇賞2000mや、2400m前後のレースは大きな差はつかず大接戦になることで知られるが、14着のコスモバルクの2分23秒5まで勝ち馬から1秒ちょっとの差。みんな秘めていたスピード能力を引き出されたと同時に、これだけ厳しい流れになると、敗れた陣営も敗戦を納得せざる得ず、最後は底力と秘める可能性の勝負だった。

 勝ったイギリスのアルカセットは、これで2400m[5-5-0-0]。3走前、バゴ(今回は残念ながら8着)に完勝した時点でJC挑戦を決めたというが、英仏だけのレース経験しかなく、最高時計は2分28秒9。JCでは苦戦になることが多いタイプだが、まだキャリア15戦。本格化したのがこの夏で、凱旋門賞もBCも使えない誤算はあったが、デットーリ騎手(JCはこれで[3-0-2-2])が評価した通り、速い時計の競馬向きだった。デットーリ騎手は、ジャパンCを4、9、3番人気の馬で、すべて鼻差勝ちで3勝。恐ろしい騎手がいるものだ。

 ハーツクライは残念。3cm程度の鼻差だったというが、ようやく全能力を爆発させたのだから仕方がない。橋口厩舎も、ルメール騎手(これで日本のGIで2着5回目)も不思議で、惜しい2着に見入られている。デットーリの鼻差の強運と、またまた今回は同じレースで生じた結果だけに複雑だ。

 3着ゼンノロブロイは、一瞬は抜け出して勝てるかのシーンはあったが、力は出し切っただろう。アルカセット、ハーツクライがこれまでのレースで示していた以上の可能性を引き出されたが、ゼンノロブロイにはその部分が少なかったのだろう。ウィジャボードは少差5着。さすがの能力をみせたが、この馬、勢いに乗っていた昨秋ならもっと好レースができただろう。バゴも同じで、この凱旋門賞で2分25秒台の記録をもつ2頭、今年は必ずしも絶好調ではなかった。

 期待したスズカマンボは2分22秒9の9着。うまく馬群をさばけなかったが、これは仕方がない。相手が走りすぎた。1000m通過58秒3、2000m地点の1分57秒7でもまだ先頭でレースを作ったタップダンスシチーは、負けたとはいえ一昨年の勝ち馬らしく立派。決して形づくりではなかった。有馬記念でもまだまだ主役の1頭だろう。近年、やや世界の記録地図の中で評価落ちのきらいもあるジャパンCだが、今年は時計うんぬんではなく、歴史に残る好レースだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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