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秋シーズン開幕の9月に留意してきたセオリーとは

  • 2019年09月07日(土) 12時00分

休み明け実績馬と夏場を戦ってきた馬、そしてこの時期ならではの芝状態


 この時期になると、いつも決めていることがある。休み明けの馬よりも夏競馬を使ってきた馬をより重視するということ。

 休み明けの馬には実績のあるものが多く、どうしても人気になりやすい。だが、暑い夏場での調整は大変でその能力を十分に発揮できるとは限らない。その上、こういう馬にとっては9月の一戦は、次の目標をめざす通過点であり、秋のGIシリーズこそと思っている筈だ。この先に向かっての過渡期を戦う休み明けの実績馬は、人気になればなるほど妙味が薄れる。

 今はサマーシリーズの最終戦であれば、チャンピオンの資格のある出走馬に注目するというのがセオリーだと実践してきた。

 もう一点、こころしていることは、やはり開幕週の馬場は芝がしっかり根を張って一年中で一番いいという点だ。

 走りやすい絶好の馬場で走破タイムも速いし、上がりも速い決着となっている。少しぐらいペースが速くても前が止まらないケースが多い。スムーズに先行できる馬が見つかったら、チャンスと考えている。

 以上2つの点は、秋シーズン開幕の9月にずっと留意してきた。ただ、そうは言ってもこの秋にこそと秘かに大躍進を期している素質馬の存在は、気にしなければならない。

 例えて言えばバネが強烈な力をためながら縮んでいるようなもので、だからこそ大きな飛躍が期待できる。こうした馬は、レースで屈しながらも逆転をはかる粘り強さを秘めており、いつかその能力は開花する。

 かつて、京成杯オータムHで、良血開花の思いが本格化に変わった瞬間があった。平成13年のことで、デビュー前から大器と言われていたカーリアン産駒の愛国産馬ゼンノエルシド(牡4)が11戦目にして初めて重賞勝ちをした時で、そぼ降る雨の中、手応え十分に坂を駆け上がり、クリスザブレイヴに4馬身もの差をつけ、しかも驚異の芝1600米1分31秒5の日本レコードを樹立したのだった。

 父カーリアンは仏ダービー馬で、英・愛リーディングサイアー、母エンブラが英最優秀2歳牝馬というゼンノエルシドは、3歳時は2戦1勝、4歳時の前半までは休みを挟みながら4戦して2勝と、脚部不安で出世が遅れていて、夏の札幌で4勝目をあげてから軌道に乗り、京成杯オータムHで初重賞制覇となっていた。そしてこの2ヵ月後マイルチャンピオンSでマイルの頂点に上り詰めたのだった。

 京成杯オータムHの覇者で同年のマイルチャンピオンSを勝った馬は、これまでこの一頭しか出ていない。こんな稀有なことが今後起きるかどうか。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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