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【府中牝馬S】エリザベス女王杯凱歌のプレリュード

  • 2019年10月13日(日) 18時00分

クロコスミア、新たな歴史を刻めるか


 近年の府中牝馬Sは、11月のGI「エリザベス女王杯」の前哨戦。2016年も2018年も、距離やコースが異なるのに、女王杯の「1着、2着」馬はこの府中牝馬Sの出走馬だった。

 最近10年間の女王杯の「1、2、3」着馬計30頭の直前のステップレースは、「府中牝馬S組…9頭」「秋華賞組…8頭」「京都大賞典、オールカマー組…計6頭」

「その他…7頭」なので、わずかの差とはいえもっとも有力な前哨戦である。

 最近10回の府中牝馬Sで3着以内に好走した30頭の出走レース(近走)は、これはもうさまざまだが、半数以上の「16頭」が5月のGI「ヴィクトリアマイル(その年)」の出走馬であることに注目したい。先週の毎日王冠と同様、レースランクの高いGIIであると同時に、豊かなスピード能力が求められている。

 出走馬の最近4-5走までの成績が載っている資料でチェックしたい。人気のラッキーライラック、プリモシーンなど6頭が春のヴィクトリアマイルに出走している。だから、その馬たちが人気になる勢力図なのだ、ともいえる。

 クロコスミア(父ステイゴールド)は2017年、スローの逃げに持ち込みこのGIIを1分48秒1で勝っている(自身の上がり33秒7)。ところが昨年は、ちょっときついペース追走の2番手になって5着止まりだった。1分45秒2(自身の上がり33秒8)。

 少し衰えたかと思われた今年は6歳。最近はめったに人気にならないが、2走前のヴィクトリアマイル3着(11番人気)の内容は素晴らしい。すんなり行けないとダメだったのに、4-5番手でもまれながら追走し、坂上からしぶとく伸びて3着。人気のラッキーライラックをハナ差交わして3着、2着プリモシーンともわずか0秒1差しかなかった。

 時計の1分30秒6(自身の上がり33秒5)は、超高速馬場だったので驚けないが、下級条件時はともかく、オープンとなった3歳以降、ハナを切れずに快走したのはきわめて珍しい。4歳時のエリザベス女王杯を2番手から抜け出て2着して以来のことになる。それも粘っただけではなく、坂上から懸命に伸びている。さすが、タフなステイゴールド牝馬というしかない。うまくタメて乗る戸崎騎手とのコンビは、【1-0-1-2】。リズムが合っている。

 3代母アルヴォラは、名種牡馬Cape Cross(ウィジャボード、Sea the Starsの父)の半姉、祖母ショウエイミズキは、英GIスプリントC1着、安田記念2着などのディクタットの半妹になる。

 勝った4歳時の府中牝馬Sが稍重だったように、仮に馬場の回復が遅れてもさして苦にしない。牝馬東タイ杯などの時代を含めて過去66回、2連勝した馬はいるが、6歳の勝ち馬も、隔年で2勝した馬もいない。ステイゴールドの牝馬クロコスミアは、歴史を塗り替えることができるだろうか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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