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社台SSを訪ねて

  • 2019年10月24日(木) 12時00分
 先日、北海道安平町の社台スタリオンステーションを訪ね、事務局の徳武英介さんに案内してもらった。

 3カ所の厩舎から種付所につながる道は、馬が脚を滑らせないよう、また、歩様のチェックなどもしやすいよう、ロードヒーティングにしてあるという。

 まずは、オルフェーヴルを見せてもらった。

オルフェーヴル。種牡馬となって今年が6シーズン目。


 オルフェの馬房の前には、ファンから贈られたたくさんのお守りがあった。これらは年に一回、神社に奉納しているという。「産駒は、父譲りの体力があるし、時計が出るので早くデビューできます。ですが、本来は、早い時期からプッシュしていくのは向いていないように思います。地方でも走るようになってきましたよね」と徳武さん。

 次は、今週末の天皇賞・秋にアーモンドアイ、サートゥルナーリアという有力な産駒が出走するロードカナロア。その馬房の通路側の窓には、目隠しがされていた。

ロードカナロアの馬房の通路側はパネルで目隠しがされている。


ロードカナロア。外に面した馬房の窓はあけられている。


 馬房の通路側をパネルで目隠ししたことについて、徳武さんはこう説明する。「性格が変わって、王様になってしまったんです。外に出るときなど、何でも自分が一番でなくてはならないので、ほかの馬が出入りするところが見えるとカッカするんです。それで、見えないようにしました。こうしてからは、また穏やかに過ごせるようになりました」

 外の窓から顔を見せたカナロアは、私たちの存在を確認するようにしてから、静かな目を放牧地に向けた。

 つづいてはキタサンブラック。徳武さんが小さな扉をあけると、ときどきカイバ桶から顔を上げ、こちらを見つめる。

キタサンブラック。桟にこぼした飼料も舐めるように食べる。


「上品で、細面ですよね。非常にサンデーサイレンスっぽい。サクラバクシンオーの血が入っているので切れもある。綺麗な脚は授かり物だと思います」

 今年21歳になったクロフネは、私たちにはほとんど関心を示さず、カイバ桶の飼料や、敷料の藁を食べていた。

クロフネ。たてがみや尾まで白くなった。


 クロフネは肝機能が低下したこともあり、今年は一頭も種付けをしなかったという。種牡馬引退も近いようだ。

 敷地内には、先代の吉田善哉氏が亡くなったときに植樹した「吉田善哉の森」があり、近くに社台グループを支えたノーザンテーストやサンデーサイレンスの墓がある。なお、ここは一般見学不可のエリアだ。

吉田善哉の森。右手前には社台グループ初のダービー馬ダイナガリバーの墓が見える。


「吉田善哉の森」は、種牡馬の放牧地が見えるように、と、傾斜地にある。

 ここには「栄宝」という「当て馬のサンデーサイレンス」と呼ばれた中間種の墓もある。その子孫は今も社台SSにいるという。

 私が先月、スポーツ誌の取材でここを訪ねたとき、ディープインパクトとキングカメハメハの遺灰は、それぞれが使用していた馬房にあった。今、馬房は別の馬が使用しており、2頭の遺灰は種付所の部屋に移されている。

ディープインパクトとキングカメハメハの遺灰。


 オーナーの意向で、今後、トウカイテイオーと同じように、みなが墓参りできるところに埋葬される予定だという。

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登録済

作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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