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過去から現在までの牝馬たちの戦い

  • 2019年11月09日(土) 12時00分

エリザベス女王杯で活躍する牝馬の特徴


 未来は現在にあると言う。取り越し苦労をしても仕方なく、今にどう対処するかを決断することこそ大切と言うことだが、競馬ではしばしばこういう局面に遭遇する。エリザベス女王杯で、その年のオークス馬が勝ったのは、これまで13頭が出走して2013年のメイショウマンボだけ。これだけの挑戦があったのに、如何にも少ない。それぞれが、その時の今に対処して出走に漕ぎ着けたのだが、古馬勢の壁が厚かったということだろう。

 今年は無敵のオークス馬ラヴズオンリーユーが、古馬優位を覆すかが話題になった。本来は、3歳牝馬秋のタイトル秋華賞を目標にするのだが、爪を痛めて帰厩が遅れ、それでもなんとかなりそうというのを思い切り、ぶっつけでの出走となったが、この決断こそ、未来は現在にあるを立証したことになりそうだ。春と比べ体重が増えていい筋肉がつき、さらなる可能性を秘めている。

 活躍する牝馬には、ひとつの共通点があり、それが馬体重の増加だ。当然、古牝馬にもそれは言える。それと牝馬の特徴として、活躍する期間が牡馬より短いことが挙げられる。エリザベス女王杯の勝ち馬はこれまで3歳が8頭、4歳が10頭、5歳が5頭で6歳以上はいない。世代交代のイメージが強いが、古牝馬の出番は少ない。牝馬は年齢を重ねると、その瞳に変化が見られると聞いたことがあった。馬体は変らなくとも、走る気力のほうに変化が起こり、次の役割となる繁殖に少しずつ移行するからだと言われている。

 それと、牡馬と比べレースのダメージを受けやすい。秋華賞馬の同年のエリザベス女王杯の勝利は、ファインモーション、ダイワスカーレット、メイショウマンボの3頭だけ、三冠牝馬のスティルインラブでさえ2着に敗れていた。

 こうした流れを受け、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシスが新しい時代を切り拓くことが出来るか。府中牝馬Sで最速の上がりで重賞初勝利を上げた4歳馬スカーレットカラーの出番となるか。こちらは、昨年の秋華賞を体質の弱さから取り消し無理をさせなかったのが成長につながり、前走の馬体重がデビュー時より34キロも増えていた。ひとつの決断が功を奏したと言える。

 これら有力馬に対して、この2年いずれもクビ差の2着と涙を呑んだクロコスミアがどう走るかも注目したい。まだエリザベス女王杯を勝っていないステイゴールド産駒だが、この6歳馬の3年目のレースがどうなるかにも気が向く。3度目の正直になるか、2度あることは3度あるになるのか、これだけ続けて出た例は少ない。

 かつて、フサイチエアデールの2年連続2着はあったが、こちらはそれで繁殖に上がっていた。6歳馬の出番がどこまであるか、この年長馬の意地も今年の見所のひとつだが果たして。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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