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【ジャパンC】最高の仕上がり見せたスワーヴリチャード

  • 2019年11月25日(月) 18時00分

見据えるのは世界のビッグレース、これが終着点じゃない


 不良馬場から、午後になって重馬場へ。回復し始めた東京の芝コースは荒れているように見えるインの方が伸びる。トップジョッキーはみんな察知していたから、4コーナー手前から直線に向く地点の攻防がきびしかった。だれもインを開けない。

 勝ったスワーヴリチャード(父ハーツクライ)のO.マーフィー騎手は、最初の1コーナーで窮屈になったインを果敢にすり抜けると、道中は終始好位のラチ沿いキープ。直線もダイワキャグニー(父キングカメハメハ)、カレンブーケドール(父ディープインパクト)のインに突っ込むのにためらいはなかった。

 スワーヴリチャードは日本ダービー2着、GI大阪杯1着はあっても、まだ未完の印象が濃く、1600mの安田記念、1800mの中山記念への出走など、勝算は乏しくともあえてきついレースを経験させながら、未来のビッグタイトルを目標に充実をうながす手法を取ってきた。いよいよ5歳の秋、坂路調教を主体にし、チークピーシズを着用し、意欲満々のO.マーフィーを鞍上に迎え、最高の状態に仕上げてのジャパンC制覇だった。念願を達成した陣営は、これが終着点ではなく、もっと強敵のそろう世界のビッグレースを展望する意欲もみせている。

重賞レース回顧

まだこれから広がる未来があるスワーヴリチャード(撮影:下野雄規)


 今回対戦した7歳シュヴァルグラン、7-8歳時の天皇賞(春)でも快走したカレンミロティック、牝馬ながら5歳のいま本物になったリスグラシュー、同じく同期のマイスタイルなど、ハーツクライはサンデーサイレンス系の中でステイゴールドと同様、遅咲きでタフな産駒を送っている。スワーヴリチャードにはまだこれから広がる未来があると思える。

 父ハーツクライ(18歳)は、秋になって活躍馬が続出し初の総合ランキング2位に躍進が濃厚となった。スワーヴリチャードを中心に、今週のチャンピオンズCに出走予定のタイムフライヤー(マーフィー騎乗予定)。2歳牡馬マイラプソディが京都2歳Sなど【3-0-0-0】。サウジアラビアRCのサリオスと、次週12月8日の「阪神JF」を予定するウーマンズハートがともに【2-0-0-0】。同じく牝馬クラヴァシュドールが【1-1-0-0】など、2歳馬には逸材がそろっている。

 惜敗の3歳牝馬カレンブーケドールは、あと一歩のところでビッグタイトルを逃したが、この苦しいコンディションの馬場での2着は勝ち馬に少しも見劣らない大変な快走だった。検量室で身元引受人の国枝調教師がマーフィーを軽く突っついて祝福したが、苦笑いは「おまえ、カレンブーケドールはなぁ…」と言いたそうな顔つきだった。

 これでオークス2着、秋華賞2着につづいてのGI惜敗だが、重馬場のジャパンC2着は絶大な価値がある。津村明秀騎手(33)は、一分のスキもない見事な攻めの騎乗だった。最内枠から発馬を決め、インの4番手キープ。追い込みの効かない馬場の中、最後までカレンブーケドールを懸命にがまんさせていた。

 3着ワグネリアン(父ディープインパクト)は、巧みに好位の馬群で機をうかがっていたが、きびしいせめぎ合いになった4コーナーで、一番窮屈なポジションになってスムーズにさばけなかった。ちょっと小柄で非力にも映る時期もあったが、今回は絞ったマイナス体重でも身体全体が大きく見えた。4歳の今年はここまで【0-0-2-2】だが、日本ダービー当時より確実にパワーアップしている。

 ただ1頭、後方から突っ込んで4着したマカヒキ(父ディープインパクト)は、外枠と馬場状態を考慮した武豊騎手の、この手しかないと思える善戦だった。直線に入って巧みに内から馬場の中ほどに回ったが、まったく追い込みの効かない芝コンディションと、最近の成績を考えれば納得の入着だろう。変わらず迫力あふれる馬体を保っている。まだチャンスはあるかもしれない。もう6歳秋だが…。

 1番人気のレイデオロ(父キングカメハメハ)は、いつも以上にレース前の気負いが激しく、3歳の若駒のように映った。もちろん馬場コンディションが最大の敗因だが、引退レースとされる有馬記念で巻き返せるだろうか。全弟レイエンダは【4-2-0-5】。そして兄のレイデオロが【7-2-1-6】。快走か、はたまた凡走か。体調や相手関係というより、その日の精神状態が成績を左右してしまう兄弟になった。

 L.デットーリのルックトゥワイス(父ステイゴールド)は、最初から馬場状態を気にして自身のリズムを取り戻すことができなかった。重馬場の巧拙という以前に、今回は馬体がさびしく見えた。

 外から先行して7着に終わったエタリオウ(父ステイゴールド)は、結果は平凡な成績にとどまったが、462キロ(マイナス16キロ)の馬体はむしろこのくらいの方が理想と見えた。スランプを脱し、課題の闘争心はもどっている。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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