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【朝日杯FS】万能型の大器、広がる可能性に期待

  • 2019年12月14日(土) 18時00分

ここをクリアすれば来季クラシックの主役になるかもしれない


 断然人気のサリオスには、先週の阪神JFで単勝1.8倍の人気に応えられなかったリアアメリアと同じような高速のマイル戦に対するに死角はないだろうか。未知の部分大の、未完成な2歳馬であり、R.ムーア騎手も今季の日本ではなぜか冴えを欠いている。先週まで【2-10-4-23】だった。

 ただ、1600mの最高記録がスローでの1分34秒3「61秒3-33秒0」にとどまったリアアメリアに対し、サリオスの東京1600mの2歳コースレコードの中身は「59秒6-33秒1」=1分32秒7。確かにハイペースを経験したわけではないが、高速決着を意識し、先行策を取った強みがある。楽々と2歳のマイル戦らしい流れに乗り、そのうえで上がり「33秒1-11秒5」と加速できた。だから、コースレコードの1分32秒7。いっぱいではなかった。

 とはいえ、父ハーツクライは05年のジャパンCを2分22秒1で鼻差2着の総合力があり、産駒には次週の有馬記念で引退予定のリスグラシュー(ヴィクトリアマイル2着)、ロジクライ(富士S1着)など、快時計のマイルをこなした産駒はいるものの、大半の上級馬は2000m以上が理想。現に阪神JFでクラヴァシュドール、ウーマンズハートが3着、4着に終わったばかり。本物のマイラーは送っていない。

 独オークスなど4勝の母サロミナの勝ち星も1850m以上だった。産駒のサロニカ、サラキアは、父にディープインパクトを持つ全姉妹なのにスピード型ではない。

 サロミナと同じLomitas(ロミタス、祖父Nijinsky)の産駒で、配合まで似ているデインドリームは凱旋門賞を2分24秒49で圧勝の意外性を爆発させたが、その前走のバーデン大賞は12秒以上も遅い2400m2分37秒52での独走。本当は時計のかかる長丁場がベストだった。

 父母両系ともにマイラー系ではないサリオスだが、540キロ近い巨漢馬。そのため、迫力のフットワークが生きるのは、巨体ゆえ自身のスタミナを消耗してしまう長丁場より、本質はスピード型ではないのに、今後も1600m級のほうが合うのではないか、という見方もあったりする。

 だが、最初は水牛か怪獣ではないのか、と映ったごつい体形のサリオスは使うごとに身体つきが整っている。ここでマイルのGIをクリアするとき、万能型に近い大器として来季のクラシック路線の主役になるかもしれない。距離不安が生じるのは、逆に、むしろ距離が2400m級に延びるときではないかとも思える。

 初の阪神遠征は心配ない。ノーザンファームしがらき育ちなので関西への輸送は慣れている。万全を期して1日早く輸送している。

 死角、心配はあってもサリオスの広がる可能性に期待したい。相手は絞りたいが、もっとも魅力があるのは一段と動き良化のラウダシオン(父リアルインパクト)。こちらは本物になるのが早いマイラーだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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