ここでの快走は、必ずその先につながる
枯葉色の景色が一日一日と淡い春に染まって行く季節の微妙な移り変わり。この季節と季節の間といっていい中にあっても、やがて百花が燃えるその時期に身をおくことができる。共同通信杯は、言ってみれば鮮やかな黄緑色の小さな粒を持ったふきのとうの若い芽を思い起こさせる。しっかりとその存在を示し、進むべき道を示してくれる。なのに心は弾んでこない。「夢は枯野をかけ廻(めぐ)る」のだ。
芭蕉最後のこの句は、「旅に病んで」で始まっている。寝てみる夢も、さめてみる夢も、夢であることに変わりはないのだが、これは生涯を終えようとするときの道半ばの思いがにじんでいて感銘を受けた。しかし、こちらの夢はあくまでも競馬にかけたもの、夢をかけた馬がそれを果たせずに去って行く姿は、見るに忍びない。まして、こちらがこれぞと意気込んだ馬であれば尚さらだ。よし、次こそはと、今度はばん回のチャンスに賭ける。
一時は「夢は枯野をかけ廻っても」、きっと百花が燃える時期にはそこにいるぞと。
共同通信杯は距離が1800米の東京であるところに意味があり、ここでの快走は、必ずその先につながる。ただ、レースの傾向は押さえておきたい。スタートして向正面が長く、ペースは速くならない。それだけ、長い直線の上がりが速い。従って後方に控える人気馬は黄信号。京都、阪神の内回りで勝ったものは過信できない。重賞なら4着以内、オープンなら連対しているものと、これらを一応の基準としておく。これらから外れた馬が入ったときに、3連単の万馬券が。
これまで、テンポイント、ビゼンニシキ、フサイチホウオーの3頭が4戦全勝でここを勝っている。今年は、マイラプソディがこれに該当するが、明らかにダービーを意識して東上してきた。武豊騎手は「非常に素直な性格で、走るフォームがいい。将来が楽しみ」と最初から評価していた。距離は万能で、スピードの持続力に優れた馬だ。ゆったり大きな走法をしっかり見ておきたい。
父が英ダービー馬で英愛GIを全部で5勝もしているというダーリントンホールは、なかなか本来の出来になれないできた。前走はプラス12キロで反応がひと息だった。これも血統からスピードの持続力のある中距離馬として大成できると期待したい。
あとは、兄に香港ヴァーズ、宝塚記念のGI2勝馬のサトノクラウンがいるフィリオアレグロ、東京の2000米で速いタイムの勝利のあるビターエンダーなどディープインパクト、オルフェーヴルの血を引く2頭を加えて、ダービーまでを視野に入れて見ていくつもりだ。