騎乗訓練も軌道に乗って来る頃
BTC育成調教技術者養成研修第38期生の騎乗訓練風景を見学してきた。今春入所した38期生は20名いたが、その後女子1名が退所し、現在女子2名、男子17名の計19名が研修中である。
研修所を訪れたのは6月初旬のある日のこと。これから全員揃っての騎乗訓練を行なうというので、厩舎に隣接した角馬場に行く。
現在いる38期生が入所してきたのは4月初旬のことだから、ちょうど2ヶ月が経過したところだ。ようやく厩舎作業にも慣れて、騎乗訓練も軌道に乗って来る頃ではある。
現在のメニューとしては、角馬場での速歩から駈歩が主体である。如何に馬を制御しながら操作できるか、を繰り返しみっちりと行なう。19騎が隊列を組み、常歩から速歩と進んで、最後は各々3馬身の間隔を取って駈歩までスピードアップする。
「今年の38期生は、新型コロナウイルスのせいで、例年実施している見学が今のところ一切できなくなっているので、生活する寮と厩舎との往復だけです。週に一度、町のスーパーに団体で買い物に出るくらいしか外出できずにいるので、少々気の毒ではありますね。その分、訓練に集中できているとも言えるわけですが」と中込教育課長。
19名の研修生に、3名の教官が騎乗しながら、併走で絶えず1人1人にアドバイスをする。今月中旬には、1周800mの馬場に出て周回コースを使用しての騎乗訓練に移行するので、それまでに基礎をしっかりと体得させなければならない。なので、角馬場での訓練は非常に重要になってくる。
「周回コースは、角馬場よりずっと広いので、馬によっては競走馬時代の記憶が蘇って暴走気味に突っ走ってしまうケースがこれまでにもずいぶんありました。しかし、制御する技術が伴わないと、馬に走られてしまっても上手に抑えられないため、落馬して怪我をするケースもあったわけです。そうなると、恐怖感が先にたって、騎乗が怖くなり、精神的に委縮してしまって伸び悩むだけでなく、研修を継続する意欲も減退して、結果的に退学することになった例もありました」と教官の1人が言う。
通常3年くらいを要するメニューを1年間に凝縮して教え込まなければならないのがこの研修であり、研修生はもちろんのこと、指導する教官の苦労も並大抵ではない。
この日は午前中に2鞍、午後1鞍の3鞍を消化した。その合間を縫って、馬装や手入れ、訓練後の馬洗いも自分の手で行なわねばならない。もたもたしていると「もっと手早く作業するように。民間の育成牧場に就職したら、そんなゆっくりやっている暇はないぞ」などと注意される。
例年であれば、5月の札幌競馬場でのトレーニングセールや門別競馬場のナイター競馬見学など、馬産地のスケジュールに合わせて、外に出かけ見聞を広める機会が用意されているわけだが、今年はいささか事情が異なる。新型コロナウイルスの感染状況がどうなるかまだはっきりとは分からないので、研修生が団体で出向くのは、受け入れる側にとっても対応が難しいところだ。夏になれば、少人数ごとに民間育成牧場などへの実習も待っているが、今年はさてどうなることやら。
近いうちにまた訓練風景を見に行くつもりでいる。次は800m馬場での騎乗訓練が本格化する頃を見計らって訪れたいと思っている。