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【安田記念】今まで以上の勝負強さ! 池添騎手だからできた完璧な騎乗

  • 2020年06月11日(木) 18時00分
哲三の眼

GI2勝目を挙げたグランアレグリア(提供:デイリースポーツ)


安田記念はグランアレグリアが勝利! 圧倒的支持のアーモンドアイをも寄せ付けず、2馬身半差の圧勝でした。前回のコラムでグランアレグリア×池添騎手を注目コンビとして挙げていた哲三氏は、今回の騎乗を「完璧、すごく勉強になる騎乗ぶり」と大絶賛! 今回はこの優勝コンビを中心に、超豪華メンバーで行われた春のマイル王決定戦を振り返ります。

(構成=赤見千尋)

アーモンドアイが好スタートを切っていたとしても勝ってたのでは?!


 安田記念は3番人気だったグランアレグリアが直線で突き抜けて勝利。馬自身の強さも光りましたが、コンビを組んだ(池添)謙君のここ一番での強さは今まで以上だなと。先週、「謙君は最近ちょっと乗り方を変えてきているのではと感じる部分がある」ということを書きましたが、随所にファインプレーがあって、2週に渡って詳しくお話したいほどです。ただ細かいことを言うと難しい上に相当長くなりますので、特に目立ったファインプレーを取り上げていきます。

 まずはスタートを決めて、どうポジションを取っていくのかというところで、僕としては、出す気で出して行って2、3番手に行く形は困るなと思っていたんです。そこを出す気で行きながら、自分の馬がいいポジションに付けられた分、先行したいと考えている他の馬たちが、余計にスピードを上げてポジションを取りに行かなければならない形を作った。

 他の馬にスピードアップさせて、自分の馬は減速をしないで差し脚を活かしやすいポジショニングが取れたというのは、大きなファインプレーだと思います。最初から終いの脚を伸ばすために、スピードを落としながらポジションを取るのと、スピードを上げつつポジションを取るのでは全然違って来ますから。

 さらに、3コーナーでのポジショニング。いつも僕が「クリストフのポジショニングの距離感がいい」というお話をしていますが、今回の謙君も前2馬身、後ろ1馬身半くらいの距離感があり、馬が走りやすい、スピードに乗りやすい距離感が取れたというのが大きいなと。アーモンドアイを後ろに置いてその形が作れたので、その辺りで勝ったと思いました。

 アーモンドアイがいつもよりもゲートで出負けしたというのは、そこはもう運ですよね。そういう運を掴むためには、まず自分が馬に対して出来ること、馬がどうすれば走りやすいのかを考え、それを実行することが大事です。

 よくレース後の負けコメントで、「あの馬の後ろにつけたのに」という話をするジョッキーがいます。僕自身もそういうコメントをしたことが何度もありますが、その馬の後ろにつければいいのか? という話で。もちろんそれがベストな形ならばそうするべきですが、ただただマークしたい馬に近づけてもダメなんです。

 謙君はグランアレグリアの伸び脚をきっちり活かし切りました。前走の高松宮記念では、初めての1200mで難しい条件の中、人気もしていて2着に負けて、悔しい想いをしたのではないかと想像します。ただ今回、その時のレースからかなり修正出来ていた。謙君の修正能力の高さを改めて見せてもらいました。

 具体的には4コーナーのコーナリングについてです。グランアレグリアは3歳の時、NHKマイルカップで5着(4位入線降着)だった時に、「もしかして左回りは苦手なのでは?」と言われたことがありました。僕は苦手ということはないと思っていますが、ただ苦手になりうる要素はあるのではないかと。僕の印象ですが、スピードに乗ろうとする時に若干重心が右に行きやすいように感じます。

哲三の眼

桜花賞優勝時のグランアレグリア(C)netkeiba.com


 前走の1200mでは、謙君の体感でカバーしていた印象で、それは以前騎乗していたクリストフ(ルメール騎手)が

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1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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