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【宝塚記念】コンビで重ねた経験と信頼がもたらした“6馬身差”の圧勝劇

  • 2020年07月02日(木) 18時00分
哲三の眼

上半期最後のGIで、またも牝馬が強さを見せつけた(提供:デイリースポーツ)


上半期を締め括るGI・宝塚記念は2番人気のクロノジェネシスが勝利。宝塚記念史上最大となる6馬身差をつけての圧勝でした! 鞍上はデビューから手綱を取り続ける北村友一騎手。いままでクロノジェネシスとともに積み重ねてきた経験がもたらした会心の騎乗でした。今回はそんな優勝コンビを中心に、出走各馬のレースぶりを振り返ります。

(構成=赤見千尋)

“運”というのはラッキーを待つことではない


 今年の宝塚記念は春のGIシリーズを締め括る大一番に相応しく、とても質の高い好レースでした。まずは勝った北村(友一)君。枠や直前の雨など、クロノジェネシスにとって勝ちパターンに持って行きやすい状況もあったと思いますが、今回の北村君の騎乗ぶりは、同じくクロノジェネシスと共に戦った阪神ジュベナイルフィリーズや桜花賞の時とは別人のようだと感じました。コンビでいろいろな経験をして、多くのことを学ばせてもらったことが勝利に繋がったのではないかと。北村君はとてもいい経験を積んでいるなと感じました。

 勝負所で外から上がって行って、早め先頭という形になりましたが、そこで変に脚を溜めようとせず、行く時は行く、溜める時は溜めるという感じで鞍上の意志が明確だったので、馬にとっても走りやすかったのではないかと思います。

 僕はよく、「最後は運ですよね」ということを言いますが、それはただ単にラッキーを待つということではなくて、「掴みに行くからこそ引き寄せられる運」という意味で話しています。そこを誤解されることがあるのですが、たくさんGIを勝っている騎手、勝負強いといわれる騎手は、掴みに行くからこそ最後の部分の「運」を味方につける機会が多いんです。

 今回も直前に雨が降ったのは運ですが、そのことをプラスに持って行ったのはクロノジェネシスと北村君でしょう。この馬場の変化に、北村君が迷っていろいろ考えたりすると、また違う形になったのではないかと思いますし、馬の力を信じて自信を持って乗れたことがファインプレーだったなと。ただ雨が降ったから勝ったのではなく、そういう状況を逃さず、しっかりと好走に繋げたことが大きいと思います。

哲三の眼

哲三氏「今回の北村君の騎乗ぶりは以前とは別人のよう」(C)netkeiba.com


 2着だったキセキの(武)豊さんもさすがの騎乗でした。技術の高さと経験豊富さを感じましたね。向正面で1頭だけちょっと離れた外を走っていたのですが、キセキの性格を考慮して、あまり他の馬と近づけないことで気負わず走らせるという意図もあったと思いますし、直前の雨で馬場が悪くなっていたので、いいところを選んで走らせたというところもあったと思います。

 3、4コーナーでは北村君に付いて上がって行く形になりました。このレースで近くに居て一番得する人は誰かと考えた時、

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1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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