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【セレクトセール2020】『コロナがセールに与える影響と次世代の注目種牡馬』/ まるわかり!今年の見どころ(前編)

  • 2020年07月05日(日) 18時00分
エピファネイア

▲初年度産駒から無敗の2冠牝馬デアリングタクトを送り出したエピファネイア (撮影:田中哲実)


7/13(月)14(火)の2日間にわたって開催される、セレクトセール2020。初日の1歳馬セッションには240頭、翌日の当歳馬セッションには200頭が上場を予定しています。

第二のデアリングタクトはどの馬か!? 馬産地で上場予定馬の下見を重ねている須田鷹雄さんが、「これを知ればもっと面白くなる!」今年の見どころを、2日にわたってわかりやすく解説します。

(文=須田鷹雄)


新型コロナウイルスでも購買力は旺盛か


 今年のセレクトセール、テーマとして考えなくてはならないもののひとつは、やはり新型コロナウイルスの影響だろう。

 幸いにしてセールは当初の予定通り開催できることとなり、入場者数は制限されるものの馬主と調教師がチームを組むことに支障はなくなった。競走馬流通の花形であるセレクトセールは、必要最低限の形は確保したと言えよう。ただ、コロナがプラスに働くことはない。

 どこかに影響は出る。

 あくまで個人的な見立てだが、億を超える超高額ゾーンの価格はある程度抑制されるのではないだろうか。もともと今年はコロナとは別の事情として、ビッグプレイヤーの一人であった故・近藤利一オーナーを失ってのセールである。それに加えて大口顧客が1人でも2人でも今年の超高額購買を控えたり、現地に行かず(今回導入された)電話ビッドに切り替えた場合、2億3億というところのゾーンはさすがに勢いがつかないだろう。

 ただ、中〜下位の価格帯は引き続き堅調なのではないかと見ている。もちろん本業がコロナの影響を受けていたり、株主や取引先の手前、購買を控えるといった馬主もいる。しかしFAX入札で行われたJRAブリーズアップセールやオンライン開催となった千葉サラブレッドセールの購買価格を見ると、馬主の購買力が大きく落ちているようには感じない。

 大きな理由のひとつが株価で、およそ24000円から17000円まで下げた日経平均が22000円台まで持ち直している。金融緩和の規模を考えると景気の実感はともかく株高は続いてもおかしくない。また、上げ下げの問題でなく値動きのあるところでこそ儲けている人もいるわけだ。

 昨年・一昨年あたりは完全な需要過多になっていて、買いたくても買えない「難民状態」の馬主はかなりいた。それがいきなり一掃されるというのは考えづらい。

ディープ、キンカメ産駒がいない当歳セールの行方は?


 大きなテーマのふたつめは、もちろんディープインパクト・キングカメハメハの上場産駒が一定の頭数いる最後のセールということだ。ディープインパクトは来年の1歳セッションに出る可能性はあるが、ごく少数か、あるいは今回が最後になるかだ。

 前述した予想を覆して超高額の落札があるとしたらディープインパクト産駒のほう。そもそもリザーブ価格も違う。キングカメハメハのほうはそこまで高くないリザーブの馬もいるようなので、「記念受験」のようにビッドしてみるのも面白いかもしれない。

 1歳セッションはディープインパクトとキングカメハメハがいる、当歳セッションはいないという構成になるが、その差はどういう結果を生むだろうか。もともとキングカメハメハの高額馬やディープインパクト産駒を競ることができるのは限られた大プレイヤーだけだが、当歳セッションではその大プレイヤーの予算が他種牡馬に転進してくる。そう考えると「ディープ・キンカメ以外」を買うなら1歳セッションのほうという理屈になるが……なかなか理屈通りにいかないのがセリというものでもある。

 ともあれ今年の当歳セッションから「ディープ・キンカメのいないセレクトセール」を実感しなければならないのだが、ではその次の決定打は何なのかということは見えておらず、今後は多様性のある、選択肢の豊富なセールという色彩が強まりそうだ。

 ハーツクライは一段高いブランドを維持するだろうが、同馬とて高齢なので購買者はその次の時代をイメージしなくてはならない。ハービンジャーやルーラーシップも人気はあるが、横綱というよりは大関・関脇のイメージだ。そこに加えロードカナロア産駒の成績が一段落したり、先物買い需要を集めていたドゥラメンテとモーリスがスタートダッシュとはいかなかったりで、事態は混沌とするばかりと言えよう。

 まず大きい方向性として、購買者は既成勢力にいくか、新種牡馬に賭けるかを整理しなくてはならない。既成勢力についてはどこが面白いのか。個人的には数週間だけの結果で人気落ちするなら敢えてドゥラメンテとモーリスというのは手だと思う。あとはエピファネイア。ここまで収得賞金900万円以上の産駒7頭のうち5頭が牝馬。母系にスピード色のある牝馬に注目したい。

 新種牡馬についてはどうか。先に当歳新種牡馬からいくと、売却総額ではサトノダイヤモンドだろう。単純に頭数が多いし、牝馬とはいえサマーハの2020のような注目血統もいる。スタミナに振れ過ぎるとちょっとリスキーなので、母方にスピード要素があるとよい。

 リアルスティール産駒は体のラインがきれいな馬が多い印象で、好まれやすそう。どれかが高くなるというより、一定の価格でしっかり売れてくるイメージだ。

 1歳新種牡馬はどれか1頭に絞れない難しさがある。キタサンブラックは胴長タイプの産駒が多く、好みは分かれそうだが個人的には好きだ。さすがに父ほど大きい産駒は多くなさそうで、その点も良い。イスラボニータは社台ファームの上場馬が中心なので極端な高馬は出ないだろうが、筋肉量のある産駒が多く、購買者受けは悪くなさそう。

 個人的に期待しているのがサトノアラジン。自身は最終的にマイルでGIを勝ったが、産駒のうち気性の良いものは中長距離をこなしてくるはず。

 輸入種牡馬ドレフォンは距離に限界はあるので超高馬は出にくいが、スピード要素はリスク軽減につながるので、中価格帯以下を物色する購買者には薦められる。短距離といってもガッチリムキムキという産駒ばかりなわけではないし、芝に含みを残しそうな産駒もいる。

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