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【七夕賞】真価を発揮した文句なしの勝利

  • 2020年07月13日(月) 18時00分

黄金の旅程はまだまだ続くと信じて


 3場のメインの3連単は、函館「20万3870円」、阪神「82万6670円」福島「11万1330円」。勝ち馬は順に「2、5、3」番人気なのに、2-3着は「11、7」「8、9」「7、6」人気の伏兵ばかり。難しいメインの連続だった。

 ただ、七夕賞を制した6歳牡馬クレッシェンドラヴ(父ステイゴールド)は、6カ月の休み明け、トップハンデの57キロ、こういう福島の重馬場では不利な内枠のため3番人気にとどまったが、文句なしの実力勝ちだった。

 これで福島の芝コースは、19年の七夕賞2着、福島記念1着など、5戦【2-3-0-0】。全体にタイムを要する馬場でこそ真価を発揮するステイゴールド産駒らしく、最後は馬群を割るように上がり最速の36秒6で力強く抜け出した。

 クレッシェンドラヴの牝系は、母の父サドラーズウェルズ。3代母はジャパンCにモハメド殿下の所有馬として来日した牝馬ハイホーク(産駒に種牡馬In the Wingsインザウィングス)の全妹になる。欧州血統の典型なのでスピードレースには死角があるが、スタミナは十分。少し渋った馬場ならビッグレースで通用するかもしれない。

 ステイゴールド産駒の七夕賞と、同じ福島2000mの福島記念快走馬は、このクレッシェンドラヴが「2着、1着、1着」、アルコセニョーラは「2着、2着、1着」、ステイフーリッシュ「2着」、スティッフェリオ「1着」、ウインブライト「1着」が記録されている。ステイゴールドの事実上の最終世代はもう5歳。福島2000mの重賞で父として登場するケースはさすがに少ないだろうが、東京、新潟なら…のトニービン神話が、血統図の2代前、3代前になっても生き続けたように、ステイゴールド伝説が生じることを期待したい。

 ベテラン内田博幸騎手は、先週のラジオNIKKEI賞のバビット(父ナカヤマフェスタはステイゴールド直仔)につづいて、2週連続の重賞制覇。6月14日のエプソムC(ダイワキャグニー)も勝っている。2013年にはJRA重賞「11勝」の記録がある。同じくベテランの武豊騎手(51)は、今年すでに64勝もして目下ジョッキーランキング3位。内田博幸騎手(49)にもバリバリがんばってもらおう。

写真提供:デイリースポーツ


 レース全体の流れは、前後半「61秒3-61秒2」=2分02秒5。レース上がりが37秒3-13秒0になったタフなレースなので先行タイプは苦しかった。だが、2着の4歳馬ブラヴァス(父キングカメハメハ。ヴィクトリアマイル2連覇ヴィルシーナの初仔)は、あまりきびしい流れではないと察知した福永騎手が向こう正面から早め早めに動き、直線は一旦先頭に立ちかけるシーンもあっての2着(7番人気)。渋馬場をまったく苦にしない勝ち馬の勝負強さに内から来られて屈したが、これでオープンに出世して重賞4着(0秒3差)、2着(0秒2差)。徐々にどころか急速にパワーアップしている。こちらは時計の速いレースにも死角はない。この夏、さらに上昇すること必至だ。

 ブラヴァスと同じように、条件賞金2400万でオープンに上がったばかり(降級制度があったら旧1600万下に相当)の4歳馬ヴァンケドミンゴ(父ルーラーシップ)、ヒンドゥタイムズ(父ハービンジャー)が、3着、4着。今年は、近年では珍しく4歳馬が6頭も出走することになったが(クラス移動がないので)、みんなほぼ期待通りの結果だった。

 福島巧者ヴァンケドミンゴは、これで福島【4-0-1-0】。もちろん他場でも通用する上がり馬だが、秋の福島記念なら勝ち負けだろう。良馬場の方が合う。ヒンドゥタイムズは勝ち馬に次ぐ上がり36秒7で外から伸びたが、この流れだけにもうちょっと早くスパートしたかったが、格上がりで初コース。スタートで出負けし、最初から流れに乗れなかったため、勝負どころの反応が鈍かった。ヴァンケドミンゴと同じく、こなすことはできるが良馬場の方がいいと思えた。

 途中から1番人気になったジナンボー(父ディープインパクト)は、伸び上がるようなスタートで出足一歩。大跳びで、向こう正面からずっとD.レーン騎手が気合を入れ通しだったあたり、こういう小回りコースも、滑るような渋馬場も合わないのだろう。昨年の新潟記念を1分57秒5で首差2着。コース変わりの次走に注目したい。

 内枠のウインイクシード(父マンハッタンカフェ)は、予定通り先行策は取れたが、まさか福島で内から外に回るコース取りはありえないから、今回は内枠が痛かった。

 マイネルサーパス(父アイルハヴアナザー)は、あまり凡走しないタイプ(状況も)と思えたが、一応見せ場は作ったものの直線失速。福島で初めて凡走してしまった。位置取りも、スパートのタイミングも悪くなかったが、これで3カ月以上の休み明けは【0-0-0-3】。ゆったりみせる好気配だったが、使って良化型ということか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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