引退レースのアドマイヤグルーヴの完勝だった。5歳の今年はここまで6戦して未勝利で、体つきがふっくらしすぎたきらいがあったが、エリザベス女王杯の頃から本来のシャープな体型に戻り、最後のレースできっちり答えを出したから立派。21戦8勝。大事に使われてきたこともあるが、3歳時から丸3年間、チャンピオン牝馬らしいレースを続けたのだから、見事というしかない。
パロクサイド(父ネヴァーセイダイ)から出発するこの一族。一時はあまり繁殖牝馬系ではないかもしれないなどと言われたが、いつのまにか日本を代表する名牝系に発展した。
ダイナカール、エアグルーヴ、そしてアドマイヤグルーヴと連続するGI級のファミリーを中心に、さらに枝を広げそうだ。土曜日のひいらぎ賞を制して2戦2勝となったマッチレスバロー(父フレンチデピュティ)も、その5代母がパロクサイド。同じファミリーの出身になる。
一方の人気馬、3歳ラインクラフトはまったくの凡走に終わってしまった。ちょっとムキになったとはいえ、前半47.8-58.8秒のペースは本来のラインクラフトなら少しも苦しくない楽なペース。それが簡単に失速してしまったあたり、秋にGIを2戦した目に見えない疲れがあったのだろう。特に3着したマイルCSは1分32秒3。レコードにも近い時計でマイル戦激走のツケは大きかった。
一連の内容から3歳牝馬チャンピオンのタイトルは獲得できそうだが、阪神牝馬Sは結果として、使わずもがなのGIIだったかもしれない。立て直しに入ることになる。
2着マイネサマンサ、3着レクレドールは一応、現時点での能力通りだが、最近数年間ではもっとも遅い勝ち時計が示すように、アドマイヤグルーヴの快走によって救われたものの、レースとしては案外の凡戦だった一面もある。