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史上最高の売り上げを記録したサマーセール

  • 2020年09月02日(水) 18時00分

各地方競馬馬主会による補助馬購買が好況を下支え


 先週25日(火)より始まったサマーセールは、28日(金)に無事全日程を終えた。

 4日間を通じて昨年より125頭少ない1072頭(牡597頭、牝475頭)が上場され、825頭(牡474頭、牝351頭)が落札、売却率は76.96%、売却総額は昨年の税込み49億3765万2000円に対し、7億8421万8000円増の57億2187万円(税抜き本体価格52億170万円)、サマーセールもセレクションセールに続き史上最高の売り上げを記録した。

 平均価格も前年比118万7460円増の693万5600円で、こちらも過去最高価格を記録し、大盛況のうちに幕を閉じた。

 24日(月)のセレクションセールに始まった今年の日高の市場は、史上最高の活況を呈したセレクションセールの勢いが衰えることなく、そのままサマーセールへとバトンタッチされ、最終日までに好調を維持した。馬を求める多くの購買者が会場に足を運び、セレクションセール、サマーセールを通じての購買者登録数は1454名(前年比327名増)に及んだ。

 日高では今年初の市場であり、しかも7月に予定されていたセレクションセールが1か月延期され、サマーセールの前日に開催される異例の事態になったことから、ある種、飢餓感にも似た空気が今回の盛況の要因になったと思われる。

 そして、今回のサマーセールを下支えしたのは、おそらく各地方競馬の馬主会による補助馬購買であろう。東京都を筆頭に、千葉県、神奈川県、兵庫県、石川県、岐阜県など、多くの馬主会が積極的に補助金を拠出して1歳馬購買を後押ししたことから、幅広い価格帯で激しい競り合いが展開した。

生産地便り

最高価格馬ナナヨーティアラの2019落札の瞬間


 東京都馬主会の場合、800万円〜999万円までが一律400万円、1000万円以上が500万円の補助金交付だったと聞く。枠は24頭。ここまでの金額になると予算は大幅に増えるわけで、高額になりそうな上場馬にも積極的に手を出すことができる。

 結果的に落札できなくても、競り合う過程で当該馬の価格上昇には十分貢献することになり、目ぼしい上場馬は軒並み1000万円を超えるような活発な争奪戦に一役買ったと言える。

生産地便り

牝馬最高価格馬ペブルガーデンの2019落札の瞬間


 天候にも恵まれた。今年はセレクションセールからサマーセール最終日までの5日間、一度も雨に見舞われず、連日好天が続いたことも活況につながった。

 ただ、サマーセールは昨年より上場頭数が少ないながら、連日活発な取引が続いたことから終了時刻が遅くなり、4日間とも最後の上場馬が登場したのはすっかり日が落ちてからになった。一声で落札される上場馬が少なかったために1頭当たりの所要時間が長くなってしまったのが大きな原因だ。

 とはいえ、連日270頭〜280頭もの上場頭数であり、午前に実施される比較展示も欠かせないので、せり開始を現行の正午から早めることも難しく、今後に課題を残したと言えそうだ。

 なお、既報の通り、サマーセールの最高価格馬は、2日目に上場された828番ナナヨーティアラの2019(牡黒鹿毛、父ハーツクライ、母の父マイネルラヴ)の5280万円(税抜き4800万円)。生産は(有)小島牧場、販売申込者はヒダカシーサイドファーム、飼養者は(株)MAXトレーニングファーム、落札者は(有)ビッグレッドファーム。

生産地便り

828番ナナヨーティアラの2019


 また牝馬では、1180番ペブルガーデンの2019(鹿毛、父エピファネイア、母の父ディープインパクト)の2640万円(税抜き2400万円)が最高価格であった。生産、販売申込者ともに(株)タイヘイ牧場、落札者は岡田スタッド。

生産地便り

1180番ペブルガーデンの2019


 両セールを総括して日高軽種馬農協の木村貢組合長は「セレクト(セレクションセール)から来られた購買者の方々が多かったと思います。コロナ感染対策を徹底してお客様をお迎えしなければならないと準備を進めてきましたので、今回は裏手の風通しの良いところでもセリに参加できるスペースを設けました。皆さんがセリに参加される中でここ便利だねというお声もいただきました。

 今回は事前登録をお願いしてできるだけ入場人員を把握したかったのですが、直前にコロナ感染状況が刻々と変わり、毎日テレビニュースで確認しながら心配はしておりました。購買者の方々は競馬場にも思うように行けない中でセリに来られるのが大きな楽しみになったのではないかと思います。

 セレクションの史上二番目の価格となった7200万円の上場馬に関しては、正直まだ自分では分析しきれていないのですが、購買者がセレクトセールの価格帯でセリに参加していただいた部分もあるだろうとは思います。

 血統的にもブラックタイプが徐々に良くなっていることや直前に新種牡馬の仔が新馬などで大活躍していてそれらの産駒が上場されていたこと、そういう部分に魅力を感じていただいたのではないかと思います。

 去年から、来年は補助馬購買を考えていると各地方競馬の馬主会からお話をいただいていたので、ある程度の購買は見込めると考えていました。おそらく競り合って落とせない状況が続いたので、ある程度予算の枠を広げられたのではと思います。

 コロナ禍にあっても各競馬場が開催を続けていただいていますから、それが今回の活発なセリになった最大の要因でもあります。数字に関してはここがピークではないかと。これ以上は望めないような気がしますね。

 サマーセールとセプテンバーセールの振り分けを生産者には考えていただきたいと各生産振興会の総会などでお願いをしてきました。来週にはすぐ市場委員会を開催し反省点などを話し合う予定です。

 今後、コロナウイルスが発生しなければ良いなぁという懸念はずっと持っております。できるだけ風通しの良い状態でセールを開催すれば不安感は少ないように思いますね。消毒もスタッフを入れて徹底したつもりです。

 サマーセールに関しては、セレクションと連動して開催できたことが大きいかと思います。ここまで売れるセリになるとは思っていませんでした。それよりも無事に開催できるかどうかの方を心配していたものですから。開催日数、一日の上場を考えなければなりませんね。サマーとセプテンバーのバランスをもう少し良くしたいとは思います。

 この好況を考えたら、個人的にはセレクション2日間という選択肢もあるように考えています。またセレクションにもう少し頭数を増やせるとも感じています」と語った。

 次はセプテンバーセールが9月22日〜24日の3日間、開催予定である。今のところ643頭が上場申し込みをしており、引き続き活発なセリが期待される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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