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有馬記念

  • 2005年12月26日(月) 12時55分
 ハーツクライの勝因はいくつもあるだろうが、最大の強みは「とにかく、絶好調だった(橋口師)」とコメントしたように、2分22秒1の激走になったジャパンCの反動もなく、変わらずピークの状態だったこと。GIで再三の2着惜敗を重ねてきた同馬を、好スタートから前半3〜4番手。秋の2戦とは一変した位置どりで巧みにレースの流れに乗せてしまったC.ルメール騎手の好騎乗も光った。他馬がスパートした3〜4角で、ハーツクライだけは周りを見つつ仕掛けを一歩遅らせる余裕すらあった。

 昨年同様の厳しい流れになるかと思えたが、タップダンスシチーは前走のジャパンCの快走と、1週前の快調教をみせた時点で、さすがに売り切れたのだろう。主導権を握ったものの、前半の1200m通過は1分14秒2(昨年は1分12秒5)。他馬にスタミナをロスさせるようなペースを作ることはできず、後半のラップも上げることはできなかった。8歳の暮れ。タフに走り続けてくれたが、さすがにもう活力は残っていなかったのだろう。

 ディープインパクト。あと一歩及ばずの2着には様々な敗因があるだろうが、1番の敗因は今回の状態が決して良くなかったことだろう。落ち着いてはいたが、体が小さく見えた。ほとばしる気迫もなく、元気がなかった。年間を通して好調をキープしてきたことは素晴らしく、今回も懸命の調整で体調を保つことには成功したのだが、ダービーや菊花賞が仮に100点に近い状態とするなら、90点か85点だったろう。年間を通してピークの状態はありえず、これは仕方がない。

 力で伸びてきたが、上がりは34.6秒。追走に苦しむようなペースではなく、スローにも近い流れ。ディープインパクトのこれまでの7戦の中で、自身の上がりが34.6秒もかかったのは初めてだった。キャリアの差とか古馬の壁ではないだろう。こんな楽なレースで、いつもの爆発するストライドが見られなかったのは、デビュー以来最小の440kgの馬体重が示すように、体調下降のバイオリズムとしか言いようがない。池江調教師の方が武騎手をなぐさめるようなシーンがあった。ひとまず今回の敗戦は受け入れようという形だった。

 逆襲を期待された5歳ゼンノロブロイは、まったくいいところなく8着。渾身の仕上げが伝えられたが、ゼンノロブロイはバリバリ追ってバリバリ食べて、堂々と立派になって520kg(+12kg)。太め残りとかではなく、ディープインパクトとはまったく逆のバイオリズムで、こちらは健康すぎた。悪いことにデザーモ騎手も不調だった。

 コスモバルクがあわやの4着。こちらはまだまだ続く挑戦に、また光が見えてきた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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