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【毎日王冠】馬場と展開も味方し期待以上の圧勝劇

  • 2020年10月12日(月) 18時00分

ハーツクライ産駒としては完成するのが早いタイプ


 断然の人気に支持された期待の3歳牡馬サリオス(父ハーツクライ)の、期待を上回る圧勝だった。1800mになると同時にグレード制が導入された1984年以降、毎日王冠で3馬身差は最大着差になる。前日までの降雨量と当日の天候を考えると、かなりタイムを要する渋馬場も考えられたが、芝コースは午後になると回復し、芝状態のいい開幕週とあって少々時計のかかる程度の「稍重」となった。パワーはあってもキャリアの浅い超大型馬のサリオスに、バランスを崩しかねない馬場を回避できたのは大きかった。当日の538キロは、3歳ながら毎日王冠史上最高馬体重の勝ち馬。

重賞レース回顧

撮影:下野雄規


 ダッシュを利かせ、コントラチェック(父ディープインパクト)の機先を制したトーラスジェミニ(父キングズベスト)の前半のペースは「34秒5-46秒2-58秒0」。前の2頭は11頭立ての稍重馬場にしては厳しい流れになった。位置取りを問わないサリオス(C.ルメール)とはいえ、紛れの生じる難しい展開にならなかったのも、初の古馬相手だけに自身のリズムに乗りやすかった。残り2ハロン標識手前で先頭に接近したサリオスは、ルメール騎手がスパートを待つほど楽だった。このペースを抜け出して2着に3馬身差。最後の1ハロンは「11秒7」。陣営も、ルメール騎手も指摘していたが、現時点では1600m-2000mがベストをサリオス自身が改めて実証した内容だった。

 2歳秋はまだ馬体が緩かったためか、なんとなくアンバランスに映った大きな馬体も、3歳の秋になり、見る角度によればスマートにも映るので、一歩ずつ好バランスに変化しているのだろう。ハーツクライ産駒は、同じ3歳世代との対戦は別に、3歳秋に古馬と対戦すると必ずしも成績が上がらない成長過程が多いが、「ごつい感じも与える見た目とは、乗った時の印象がまるで違う」とされるように、完成されるのは早いタイプなのかもしれない。

 とはいえ、まだ6戦【4-2-0-0】。若駒に負担をかけない流儀の陣営であり、天皇賞(秋)に挑戦してくれるかも…の期待はあったが、レース間隔も考慮し、次走はマイルチャンピオンシップ(11月22日)か、香港マイル(12月13日)になる予定。

 2着に粘ったダイワキャグニー(父キングカメハメハ)は、この6月に初重賞制覇となる8勝目(すべて東京芝コース)を記録したあと、去勢されてセン馬となっている。8勝もしたバリバリのオープン馬が6歳になってセン馬になるのも珍しいが、大きな馬体重減もなく、いきなりGII重賞で結果を出したのもきわめて稀なこと。パドックでカリカリする仕草も、馬場に先出しになったのも同じだが、これまで以上に渋い粘り腰をみせた。

 3着サンレイポケット(父ジャングルポケット)は、古馬のGIIにしてはチャカつく馬が多かった中、落ち着き十分。1800mは今回が2回目にもかかわらず、ここ数戦より早めに動く形になったのに最後までしっかり伸び、もう一歩で2着もありそうだった。この馬はもう少し馬場の回復が遅れて欲しかったろう。

 4着カデナ(父ディープインパクト)はズブいわけではなく、勝ったサリオスをマークして進む理想の位置に近かったが、坂でもう一歩というか、鋭く反応するところがなかった。小倉大賞典を快勝し、GI大阪杯は脚を余したかのようにも見えた0秒2差の4着。あの当時が絶好調とすると、今回は完調にはもう一歩だったか。

 前回が素晴らしい勝ち方だった(上がり32秒8の)ザダル(父トーセンラー)は、叩き2戦目。中間の動きも光っていたが、レース前からムダな気負いが目立った。サンレイポケットと同じ位置から伸びかけたが、最後は伸び負けというより、ずっと気負っていたため自身のガス欠だった。キャリアは浅く、本物になるのはこれからか。

 サリオスと同じ3歳サトノインプレッサ(父ディープインパクト)は、スタートであおり3-4馬身近いロス。後方グループはけっして厳しいペースではなく、そう無理することなく追いついたように見えたが、最初からリズムが崩れたので不発。「走り切っていない」と判断され、中1週になる菊花賞に出走の可能性がある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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