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【ジャパンC予想】3冠馬3頭それぞれに不安要素はあるが…

  • 2020年11月28日(土) 18時00分

スローペースになると想定して考える


 3頭の三冠馬対決に見逃されている要素はないが、レースの流れ(ペース)予測は難しい。展開予測は実際のペースと逆になることが珍しくないのは、多くの人びとが同じようなことを考えるので、カギを握る騎手は「その逆の作戦に出る」。当然のことでもある。

 キセキ(父ルーラーシップ)が先手を取り、早めに動いて2番手抜け出しのアーモンドアイ(父ロードカナロア)が勝った2018年は、高速の芝が重なり2分20秒6の大レコードだった。ゆっくりハナを切ったキセキはしだいにピッチを上げ、レース全体を3等分すると「48秒2-46秒6-45秒8」。

 キセキ自身の前後半は「1分11秒7-1分09秒2」。尻上がりの高速レコードとなったアーモンドアイの中身は、推定「1分12秒3-1分08秒3」=2分20秒6の大記録だった。自身の上がりは34秒1。

 だが、キセキは6歳になった。2018年とは芝状態も異なる。前走、天皇賞(秋)の2〜3番手先行が1000m通過推定61秒2、1200m通過は1分13秒0だった。あの当時のキセキではなく、自分のリズムでハナに行けるだろうか。先手を奪って見せ場を作りたいトーラスジェミニ(父キングズベスト)がペースメーカーになる可能性がある。ただ、快速系ではなく、一連の内容から速くても前半1200m通過1分13秒0前後か。もっと速ければ逆にだれも追いかけない。レース全体はスローペースになる可能性が高い。

 自在のアーモンドアイは再び先行策と思える。後半ピッチが上がる高速レース大歓迎。スローだった前走の天皇賞(秋)のアーモンドアイ自身の前後半1000mは、推定「61秒5-56秒3」=1分57秒8。そこで上がりは33秒1だった。

 アーモンドアイは新馬戦を別にすると、最近の3敗は充電完了の休養明けで快勝【7-0-0-0】したあと、すべて「大丈夫」と思われた2戦目の目に見えない活力減が響いて負けている。今回、それさえなければまず崩れない。

 コントレイル(父ディープインパクト)の日本ダービーは、前後半「1分13秒5=1分10秒6」=2分24秒1(Cコース)。今回予測されるペース以上に緩い流れだった。好位からスパートを待って坂上で楽に抜けたコントレイル自身の後半は推定「1分09秒5」前後。楽々とではあるが最後は「34秒0-11秒7」だった。

 2歳秋の東京スポーツ杯1800mを、ムーア騎手が気を抜かせず「上がり33秒1-11秒4」でまとめたほどだから、ディープインパクト産駒のコントレイルも高速上がりは歓迎。カギは3000mの菊花賞も勝っているが、本当に東京の2400mがベストか、だろう。

 もうひとつ、菊花賞→ジャパンCとなった3歳牡馬は史上通算【2-3-4-29】。まだ「菊花賞→ジャパンC連勝馬」はいない。スローならコントレイルもまず崩れないだろうが、疲れの残る危険のあるローテーションはベストとはいえない。

 デアリングタクト(父エピファネイア)のように秋華賞→ジャパンCとなった3歳牝馬は、間にエリザベス女王杯をはさんだ2013年デニムアンドルビー、フサイチパンドラ(アーモンドアイの母)を含めて、【2-3-1-7】。同じ3歳牡馬よりずっと好走例が多い。秋華賞2000mは牡馬より楽だからだ。デアリングタクトのオークスは前後半バランス「1分12秒5-1分11秒9」=2分24秒4(Bコース)。1週後の日本ダービーとレベルの差は小さかったと思える。

 そういう流れのオークスを中位より後方から、直線スムーズに前が空いたわけでもないのに、デアリングタクトは推定「10秒9-10秒9-11秒3」=33秒1で突き抜けている。5戦のキャリアでジャパンCを制した馬などいない(1996年2着のファビラスラフインが5戦)。

 今回53キロとはいえ、ちょっと人気になりすぎの気はするが、秋華賞→ジャパンC連勝を達成した2012年ジェンティルドンナ、そして2018年のアーモンドアイに続くのは3歳牝馬デアリングタクトではないだろうか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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