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【阪神JF】高い能力を秘めた馬は1頭だけではなかった

  • 2020年12月14日(月) 18時00分

白毛一族はダートにとどまらないファミリーとなった


 前走のアルテミスSに続き、バンデージや手綱、覆面、頭絡に至るまで装い純白のソダシ(父クロフネ)が、4戦4勝のままGI阪神ジュベナイルFを制し、2歳牝馬チャンピオンの座を確定的にした。日本では1979年に初めて出現した「白毛馬」として初のビッグタイトル制覇だった。4戦無敗でこのGIを制したのは1991年のニシノフラワー(桜花賞などGI3勝)、2002年のピースオブワールドに続き史上3頭目になる。

重賞レース回顧

今年の上位陣はすでに桜花賞レベルに達していると考える


 さすがに今回は完勝とはならなかった。外から伸びたメイケイエール(父ミッキーアイル)、さらにその外から突っ込んだユーバーレーベン(父ゴールドシップ)、さらには終始直後でマークして内から猛然と伸びたC.ルメール騎手のサトノレイナス(父ディープインパクト)にまとめて交わされてしまうのか…と映った瞬間もあったが、ソダシは実に勝負強かった。最後までライバルの追撃に屈しなかった。

 寸前まで粘ったヨカヨカ(父スクワートルスクワート)の作ったレース全体の流れは、前後半バランス「46秒8-(1000m58秒7)-46秒3」=1分33秒1(上がり34秒4)。昨2019年、快速レシステンシア(父ダイワメジャー)が5馬身差独走で記録したレースレコード「45秒5-(1000m57秒5)-47秒2」=1分32秒7(上がり35秒2)には及ばず、2006年のウオッカと並ぶレース史上2位タイの時計だが、その中身は少しも見劣らない。

 ペースを落とすことなく1分32秒7で逃げ切ったレシステンシアのスピードは圧倒的だったが、猛ペースゆえ後半は「47秒2-35秒2-12秒5」。一方、今年の上位陣は後半「46秒3-34秒4-11秒8」の高速上がりの決着で、上位4頭が「0秒2」差のあいだに並ぶように入線している。高い能力を秘めた馬が1頭だけではなかったのである。

 季節も、馬場コンディションも、決着の仕方も異なるが、「阪神1600mの桜花賞」で史上1位の勝ちタイムは2019年グランアレグリアの1分32秒7(47秒7-45秒0)。史上2位はアーモンドアイが一気に差し切った2018年の1分33秒1(前後半46秒6-46秒5)であり、あの桜花賞は今回の阪神JFと酷似した前後半バランスだった。

 後方一気を決めたアーモンドアイ(上がり33秒2)とは比較できないが、好位から抜け出して残り200mで先頭に立った2着ラッキーライラックは、上がり34秒5で、1分33秒4の走破タイムだった。今年の上位陣、ソダシ、サトノレイナス、ユーバーレーベン、メイケイエールが阪神のマイルを好時計で乗り切った中身のバランスは、桜花賞で2着(1番人気)した、あの当時のラッキーライラックと同じような能力を秘めていることを示した。

 ソダシは洋芝の1800m札幌2歳Sをコースレコードの1分48秒2で勝ち、東京1600mのアルテミスSは、ラッキーライラックと同じ1分34秒9(偶然ではないだろう)で完勝し、今回の阪神JFの1分33秒1はレース史上2位タイ。単に表面上の時計が速いというだけでなく、中身もすでに桜花賞レベルに達していると考えることができる。

 白毛のシラユキヒメから出発した一族は、サンデーサイレンス、キングカメハメハ、クロフネ、ハービンジャー、メイケイエールの父ミッキーアイル(その父ディープインパクト)など、近年のエース種牡馬の血を取り込むことにより、もうダート向きの一族にとどまらないファミリーに進展した。クロフネの牝馬らしいマイル適性を発揮したソダシ、いかにもミッキーアイル産駒を思わせるメイケイエールは、マイルまでならまったく問題はない。このあとの長期展望はどのくらいの距離までこなせるかだろう。

 サトノレイナスは、ここまで8戦ずっと2000m以上に出走している3歳サトノフラッグ(父ディープインパクト)の全妹。こちらは1600mを3戦【2-1-0-0】となったが、2400m級に対する不安はないと思える。今回は、スタート直後からソダシをぴったりマークの位置取り。ソダシもカベにした前をさばくのに狭くなりかけたが、サトノレイナスもスムーズではなかった印象がある。着差は数センチ(7cmともいわれる)。負けたのは事実だが、勝ったにも等しい内容だった。ソダシに追いついて2歳戦を終えることになった。

 3着に突っ込んだユーバーレーベンは、輸送する前の事前馬体重(美浦)が、アルテミスSから22キロ減の462キロ。太め残りを絞ったにしても…と心配させたが、遠征したあとの当日は増えて470キロ。精神的にタフだった。後方から一番外に回って上がり最速の33秒6。同じように注文をつけたメイケイエールはゴール寸前に鈍ったが、ゴール前のユーバーレーベンはさらに鋭く伸びて勝ち馬と「鼻、首」差の3着。札幌2歳S組のレベルの高さを示すと同時に、きわめて惜しいレースだった。祖母マイネヌーヴェルを筆頭に、マイネルネオス、同アワグラス、同チャールズ、同ファンロンなどタフな活躍馬が並ぶ牝系に、父はゴールドシップ。再び評価急上昇となった。

 4番人気のインフィナイト(父モーリス)は、好馬体、好気配が光ったが、不良馬場で前2戦が「1分37秒5と、1分40秒1」。とくに前走の自身の時計より7秒0も異なる勝ち時計のレースになっては、さすがに対応は不可能だった。評価は持ち越したい。次走は変わるだろう。

 かなりイレ込んで428キロのジェラルディーナ(父モーリス、母ジェンティルドンナ)は、あの状態で1分33秒6(0秒5差)の7着なら、あまりに時計が速すぎて同じ1分33秒6で6着だったオパールムーン(父ヴィクトワールピサ)とともに、まだ評価は下がらない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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