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【天皇賞・春予想】阪神開催を歓迎する馬は?

  • 2021年05月01日(土) 18時00分

長距離路線で才能開花、自信をつけ挑む大一番


 直前の「阪神大賞典3000m」を5馬身差で独走した4歳牡馬ディープボンド(父キズナ)が、確実にスケールアップしている。昨年のクラシック3冠は力及ばず「10、5、4」着。ただ、距離延長とともに勝ち馬との差は「1秒4→0秒9→0秒7」。ゆったり流れる距離になるごとに着差を詰めていた。

 一気に開花したのが前走の阪神大賞典。重馬場のため全体時計は平凡だが、レース全体は「62秒4-63秒2-61秒7」=3分07秒3。大きくペースの落ちた部分はなく、ほぼ一定の流れで、スタミナと底力が問われた3000mだった。ゆったりみせる身体全体のバランスがさらに良くなり、跳びも大きくなったように映る。

 前哨戦ではあるが、3000m以上ではめったに崩れず、昨年の阪神大賞典を3分03秒0で快勝しているユーキャンスマイル(2着)に5馬身の差をつけた自信は大きい。

 これで阪神の芝は2400m2着、3000m1着。今春の天皇賞(春)が阪神で行われることを歓迎する陣営は他にもいるが、もっとも歓迎するのはディープボンドだろう。

 ディープボンドの8代母は、1923年生まれの輸入牝馬セレタ(英国産)。ディープボンドの5代母になるクリヒデ(父クリノハナ)は、当時は3200mだった1962年の天皇賞(秋)を勝っている。1981年、カツラノハイセイコが勝った天皇賞(春)をクビ差2着したカツアール(父ステューペンダス)は、その5代母がセレタ。クリヒデと同じようにこの牝系を大切にした栗林オーナーの所有馬だった。

 今春は、GI大阪杯圧勝のレイパパレ(10代母フロリースカツプ)。先週のフローラSを勝ったクールキャット(11代母アストニシメント)。日経新春杯のショウリュウイクゾ(11代母ビユーチフルドリーマー)。フラワーCのホウオウイクセル(9代母デヴオーニア)。

 もう一世紀(前後)も日本で育った歴史的な牝系から勝ち馬が続出している。この流れにすでに阪神大賞典を制したディープボンドも乗っている。

 古い印象を与えるファミリーの牝馬を並べたが、牝系にも(種牡馬にも)盛衰こそあっても新種は存在しないのだから、古いも新しいもない。存続か途絶えるかだけ。いかに活力と可能性を秘める配合を連続させるかが生産のベースであり、前出のレイパパレ、クールキャットと同じように、何代も何十年も継続したセレタ、クリヒデの子孫からディープボンドが出現したことは生産の大きな進展を示している。途絶えさせなかった。

 ディープボンドの相手には、オーソリティ(父オルフェーヴル)に魅力が大きい。

 なお、天皇賞(春)3200mを勝った牝馬は1953年のレダ1頭だけ(そのときの2着は牝馬クインナルビー)であることは知られる。

 だが、長い歴史の中、もっとタフな底力が必要な東京3200mの天皇賞(秋)を勝った牝馬は、前出のクリヒデのほか、ヒサトモ(トウカイテイオーの6代母)、クインナルビー(オグリキャップの5代母)、ガーネツトなど、10頭もいる。今年は京都よりタフとされる阪神コース。なら、阪神だからこそ牝馬は侮れない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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