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【ヴィクトリアM】レース史上最速の上がり32秒6が示すスピード能力

  • 2021年05月17日(月) 18時00分

天皇賞(秋)のグランアレグリアに集まる注目もすごい


重賞レース回顧

ヴィクトリアMで勝利したグランアレグリア(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 圧勝したグランアレグリア(父ディープインパクト)にとって、「前半46秒0-(1000m通過57秒6)-後半45秒0」=1分31秒0(上がり33秒4)の流れは、少しもきついペースではなく、途中から余力十分の追走となった。

 4コーナー手前からの3ハロンを自身「推定10秒9-10秒4-11秒3」=32秒6で楽々と乗り切って、せめぎ合う2着以下に4馬身差。上がり32秒6はレース史上最速であり、自身の前後半バランスは推定「47秒0-44秒0」=1分31秒0だった。

 走破時計の1分31秒0は、レースの流れ、芝コンディションの差があり、2019年ノームコアの1分30秒5(コースレコード),2020年アーモンドアイの1分30秒6に及ばなかったが、後半800m「44秒0-32秒6」の加速スピードが物語るように、こと東京の1600mでのスピード能力はアーモンドアイ、ノームコアと互角以上だろう。

 楽勝に自信を深めた陣営は、出走できるレースは限られるので、「6月6日の安田記念→10月31日の天皇賞(秋)」をこのあとのプランに掲げた。

 多分に個性が異なるので、アーモンドアイとの比較はそう意味がないが、ルメール騎手は「両方ともに文句なしの高いレベル」としたうえで、「GIを9勝したら同じレベルとできるが、まだ、アーモンドアイ(18年のジャパンCを驚異の2分20秒6のレコード勝ち)の方がちょっと上かも…」と分析するにとどめた。

 アーモンドアイは昨年のヴィクトリアマイルを前出の快時計で4馬身差圧勝のあと、一戦燃焼型の疲れと、マイル戦を快時計で激走の反動があった。間隔の詰まった安田記念でグランアレグリアの2馬身半差の2着に敗れている。グランアレグリアのほうが反動の出ないタイプで、今回のレースは激走でもなかった。安田記念にはそんなに強力な男馬はいないとみられる。安田記念のグランアレグリアは楽しみであると同時に、天皇賞(秋)のグランアレグリアに集まる注目もすごいだろう。

 一方、2番人気の4歳レシステンシア(父ダイワメジャー)は、残り1ハロン過ぎに失速してしまった。18番枠は大きな不利ではなく、「行きたい馬を行かせた(武豊騎手)」は思い描いていた通りのレース運びだった。調教でも、前半は我慢したあと、後半にピッチ上げる内容を重ねてきたので、最後にもう一度加速できるかと思えたが、自身の中身は「57秒8-34秒1」=1分31秒9。残り200mではグランアレグリアと並んでいたので、最後の1ハロンは「12秒2」にまで鈍ったことになる。これで1200-1400m[3-1-0-0]に対し、1600mは[1-2-1-2]。レース全体の前後半バランスから、失速するようなハイペースではないから、こと東京ではGIのマイル戦は1ハロン長いのだろう。

 2着に突っ込んだランブリングアレー(父ディープインパクト)は、1800m-2000m中心の出走で、かつ東京コースは今回が初めてだった。そのため10番人気にとどまったが、1800m-2000mで示した総合スピードが、底力を問われる東京でフルに爆発した。

 中団のインにつけ、外にいたグランアレグリアを見ながらの追走。直線に向くとインに詰まりそうな位置になったが、横のグランアレグリアが馬なりのまま抜け出そうとするのを察知した吉田隼人騎手は、グランアレグリアが抜けたあと(ガラッと空くはずの)スペースに続いて突っ込んだ。乗れている騎手らしい絶妙の騎乗だった。

 3着マジックキャッスル(父ディープインパクト)も道中は中団のインで、グランアレグリアを見る展開。今週の芝はインが伸びるコンディションだったので、巧みに馬群をさばいて接戦の2着争いから抜け出しかかったが、ランブリングアレーにクビだけ差されて3着。

 マジックキャッスルはこれで[2-5-1-3]。桜花賞3着の母ソーマジックは、重賞は未勝利でも通算[4-4-5-7]。半兄のソーグリッタリングも重賞未勝利なのに好走例は多く[7-7-3-12]。ただし、なぜかあと一歩が…の一族だが、逆に凡走はしない。決して弱みではなく、これがファミリーの特長なのだろう。

 3番人気のテルツェット(父ディープインパクト)は、ダービー卿CTを含めマイルで4連勝中だったが、今回はカリカリしすぎていた。前半から流れに乗れずに1分32秒4。これが自己最高タイムだから、スピードレースの経験不足が痛かった。

 14番人気で4着のディアンドル(父ルーラーシップ)は、坂上まで争覇圏にいて「58秒0-33秒8」=1分31秒8は立派。長くスランプが続いたが、東京の1600mでこれだけ粘れるなら、平坦に近いコースのGIIIなら侮れない。

 7着ダノンファンタジー(父ディープインパクト)の上がり33秒0は、勝ち馬に次ぐメンバー中2位。下げて控えたから速い上がりになったのは事実だが、高速馬場を考えるとちょっと弱気だったかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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