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【宝塚記念】史上初の偉業達成づくしのクロノジェネシス

  • 2021年06月28日(月) 18時00分

凱旋門賞を好走した馬に通じる部分があるのだろう


重賞レース回顧

ドリームレース3連覇を達成したクロノジェネシス(C)netkeiba.com


 期待の5歳牝馬クロノジェネシス(父バゴ)が、牝馬として初めてドリームレース3連覇(20宝塚記念→20有馬記念→21宝塚記念)を達成した。宝塚記念の2連覇も牝馬としては初の快挙だった。

 ファン投票1位の牝馬が勝ったのは史上初めて。なおかつ、実際のレースで1番人気だった牝馬が勝ったのも初めてのことだった。北村友一騎手の代打で騎乗したC.ルメール騎手もようやく宝塚記念を制し【1-0-0-6】。非常に喜んだ(気にしていたのだった)。

 昨年は稍重馬場を2分13秒5(自身の上がり36秒3)でレース史上最大の6馬身差。

 今年は良馬場を2分10秒9(上がり34秒4)で鋭く勝った。芝コンディションはまったく問わない。今回の馬体重は478キロ。最少だった3歳春のオークスは432キロ。レザーのように黒く滑らかな、それでいて鋭い芦毛に育った。評価に忠実な結果を残すクロノジェネシスは国内のレースで1番人気になると、これで【5-0-0-0】。

 展望する凱旋門賞2400mは、馬場が渋ると2分30秒台後半も珍しくないが、レースレコードは2分23秒61。今年の渋馬場の英オークスを16馬身差で勝ったのは3歳牝馬Snowfallスノーフォール(父ディープインパクト)だが、その母ベストインザワールド(父Galileo)の全姉Foundファウンドが2016年に記録した記録になる。

 パドックでは、久々の当日輸送のレースだったためか、ずっとチャカチャカする仕草を見せていたが、本馬場に入ると自信にあふれる落ち着いたクロノジェネシスに変わった。レース直前に動きがせわしくなる他馬とはそこが違った。

 スムーズなスタートから、ごく自然に警戒すべきレイパパレ(父ディープインパクト)を射程に入れる位置を確保すると、キセキ(父ルーラーシップ)などが好位を取りに出たが、マークすべきレイパパレとの距離はほとんど変えなかった。

 レース全体は「60秒0-(12秒4)-58秒5」=2分10秒9のスローバランス。上がり3ハロンは「11秒5-11秒5-11秒7」=34秒7となり、クロノジェネシス自身は最後の1ハロンを推定11秒3で鋭く差し切っている。凱旋門賞での騎手はまだ発表されていないが、快走したオルフェーヴルも、ナカヤマフェスタも、3位入線だったディープインパクトも宝塚記念を勝った馬だった。通じる部分があるのだろう。

 人気を分けたレイパパレは2着を確保と思えるシーンもあったが、最後に苦しくなってユニコーンライオン(父No Nay Neverノーネイネヴァー)に差し返された。まだ今回が7戦目の牝馬。3着した今回の内容を十分に称えたいが、ちょっと残念な部分もあった。ユニコーンライオンに先導を任せて2番手で進めたのは当初からの作戦通り。このスローペースだから楽に流れに乗っている。直後でクロノジェネシスがマークしているのも分かっている。だが、差し馬は別にして、先行タイプで果敢にピッチを上げたのは挑戦者のユニコーンライオン(坂井瑠星騎手)の方が先だった。

 レイパパレの手応えは十分。ユニコーンライオンは相手ではないとみて、自身も挑戦者だったはずのレイパパレ(川田将雅騎手)はスパートを待った。流れのペース(リズム)をユニコーンライオンに委ねたうえ、スパートのタイミングまでユニコーンライオンに主導されたとき、キャリアの浅いレイパパレは、自分のリズムを失っている。

 プラス10キロで432の馬体は、小柄で非力ではないかと思わせた大阪杯とは一変。ひと回り以上大きく映った。落ち着きも十分。慎重に乗った川田騎手にミスはないが、2番手抜け出し、先行抜け出しを決めた当時とは相手のレベルが違ったのは事実だ。このペースを利して果敢にスパートしてみたかった。苦しくなってからの追い比べはきつい。

 陣営は努めて平静を保ったが、今回のデキで、並ぶまもなくクロノジェネシスに交わされ、ユニコーンライオンに差し返されたショックは大きい。「今後(凱旋門賞挑戦など)はオーナーサイドと相談することになります」となってしまった。

 2着したユニコーンライオンは、これまで2000mを超す距離【0-0-0-2】。ファミリーは決して短距離系ではないが、半兄のThe Wow Signalザワウシグナルも、父ノーネイネヴァーも、その唯一のG1制覇が仏モルニー賞1200mなので、あまり距離は延びない方がいいと思われた。

 だが、前回の鳴尾記念2000mでは後半に一気にピッチを上げ、上がり34秒1で完勝した目下絶好調の上がり馬。果敢に行って単騎マイペースになった今回の前半1000m通過は60秒0。前回よりずっと速いが、スタミナを問われるほど厳しいペースではなく、先行馬ペースになったときの阪神内回りの特徴をフルに生かし切った。最後は少し鈍りながらもレイパパレに競り勝ったのは、坂井瑠星騎手の積極な好騎乗が大きかった。

 5歳牝馬カレンブーケドール(父ディープインパクト)は、これで2000m以上のGIレース「2、2、2、4、5、3、4」着。流れを問わず凡走はない。ただ、そのGIの自身の最高上がりは34秒8。今回が35秒2なので、決して大崩れしないがんばりは発揮しての結果だった。脚の使いどころが難しすぎるのだろう。

 4歳牡馬アリストテレス(父エピファネイア)は、やがてまた菊花賞2着快走の再現があるはずだが、パドック周回の途中から、まだ若さの残りすぎる死角を感じさせた。心身ともにもっとタフに成長してからだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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