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【函館記念】今回の勝利で親子3代、横山ファミリーで通算8勝目の優勝

  • 2021年07月19日(月) 18時00分

トーセンスーリヤの素晴らしい気配が目を引いた


重賞レース回顧

重賞2勝目を飾ったトーセンスーリヤ(C)netkeiba.com


 2番人気に支持された6歳牡馬トーセンスーリヤ(父ローエングリン)が1分58秒7の好タイムで独走し、2020年の新潟大賞典2000mに続く重賞2勝目を飾った。

 祖父になる横山富雄さんが「1971、1974、1975年」に3勝し、父である横山典弘騎手は「1996、2004、2011年」に3勝しているのがこの重賞。横山和生騎手の勝利は親子3代での函館記念7勝目だった。

 伯父にあたる元騎手の横山賀一さん(競馬学校教官)も2002年にヤマニンリスペクトで勝っているから、横山ファミリーで通算8勝。きわめてゲンのいい重賞になる。その2002年、小差2着トップコマンダーは騎手時代の菊沢隆徳調教師(義理の叔父)だった。

 波乱の伝統を誇ることで知られる函館記念は、決まって伏兵が快走する。2011年以降ここまで11回のうち、2019年以外は、7番人気以下の穴馬が毎年そろって2頭ずつ絡んだことになった(今年の2-3着は、14番、12番人気)。荒れる函館記念の伝統はしっかり守られた。

 勝ったトーセンスーリヤは、単勝オッズが急降下するほどパドックで素晴らしい気配が目を引いた。このデキの良さに加え、展開も絶好。先手を奪ったレッドジェニアル(父キングカメハメハ)に、かかり気味になったマイネルファンロン(父ステイゴールド)が絡むように飛ばしたため、2頭の前半1000m通過は58秒5。離れた3番手を単騎で追走する形になったトーセンスーリヤの1000m通過は推定「59秒4」前後。

 結果、3馬身差の圧勝となった同馬は、前後半「59秒4-59秒3」=1分58秒7。絶妙の平均バランスの2000mになった。流れこそ異なるが、昨年5月、好位から抜け出して快勝した新潟大賞典の1分58秒6が自身の最高記録なので、バランスの取れたラップを踏むことにより、ベストの2000mでの能力全開につながった。「返し馬から具合の良さが分かったので、あとは自分が焦らなければと思っていた(横山和生騎手)」のコメント通り、前の2頭を交わしに出たタイミングも最高だった。

 2着に突っ込んだアイスバブル(父ディープインパクト)は、凡走続きの最近の内容と、オープンで2回の2着がともに2500mの目黒記念だったため人気薄だったが、4コーナー手前まで最内を追走し、直線はちょっとスペースができた中ほどへ。テン乗りだった水口優也騎手の果敢な騎乗と、最後まで懸命の姿勢が大接戦の2着争い(10着まで0秒3差)でモノをいった。ゴール直前に狭くなる不利があったが、それでもあきらめずにコースを変えながら追って「ハナ、クビ、ハナ、クビ…」差の2着争いを伸び切った。

 クロフネの半妹になるミスパスカリから発展するファミリーは、母ウィンターコスモスの下になるポポカテペトル、ボスジラ…などこなす距離の幅が広く、かなりタフ。復活の手応えをつかんだアイスバブルは、この後の再上昇が期待できる。

 きわどい3着にベテランの快走が珍しくない函館記念らしく、1-2着馬と同じ6歳のバイオスパーク(父オルフェーヴル)が好走。今年は人気薄だったが、昨年に続いての惜しい3着だった。勝ち馬をマークするような位置取りとスパートだったが、この馬にはもう少し時計のかかるコンディションが理想だったか。函館、福島にとくに良績が集中するので、これからもローカル重賞では目が離せない。

 1番人気のカフェファラオ(父American Pharoahアメリカンファラオ)は、中団より前で流れに乗っていたから、初の芝はほとんど気にしていなかった。ただ、最内枠で58.5キロのトップハンデは苦しかった。外からのマークがきつかったこともあり、自身からスパート(加速)するチャンスも、余力もなかった。枠順も関係したが、函館のような器用さ(ペース変化に対応)を求められるコース向きではないかもしれない。

 4着に突っ込んだ4歳ディアマンミノル(父オルフェーヴル)の上がり35秒1は、アイスバブルと並んで最速タイ。通ったコースを考えれば実際は最速だった。前日の函館2歳Sで初重賞制覇を達成した泉谷楓真騎手の元気いっぱいの騎乗で、2着に届いたかと思える小差だったが、外を回った分の差だけだった。ディアマンミノルは、2走前に東京2400mのメトロポリタンSに2分24秒6(上がり33秒9)もあり、この秋、すぐに重賞に手が届くだろう。

 前走、大差で圧勝していたマイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)は、2着馬とわずか0秒1差なので着順ほど負けていないが、時計を要するスタミナ勝負型を思わせたと同時に、使って良化するタイプだろう。

 ハナズレジェンド(父ハーツクライ)は、人気のカフェファラオをマークしていたが、同馬が動けなかったためスパートのタイミングを逸してしまった印象がある。直線、インに突っ込んだが思うほど伸びなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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