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【クイーンS】秋に向け大きな自信となった今回の勝利

  • 2021年08月02日(月) 18時00分

ディープインパクトと相性が良い牝系の強みが出てきた


重賞レース回顧

クイーンSで勝利したテルツェット(C)netkeiba.com


 午前中の小雨、メインレース前からの雨は、馬場状態に大きな影響を及ぼすほどではないとみえたが、騎手の考える位置取り(展開、ペース)には大きな影響があった。

 レース全体は決してハイペースではないが(前半1000m通過59秒9)、早めに動いた馬が多く、後半は「47秒9-36秒0-最後12秒4」となった。上がり800m47秒9も、最終「1ハロン12秒4」も、ハイペースではないのにこの7年間で最も遅く、勝ちタイムも非常にタフなレースだったことを示す1分47秒8となった。

 勝った3番人気のテルツェット(父ディープインパクト)は、良馬場では毎回のように後方から上がり33秒台を記録し、エンジン全開になるのが遅いように映ることが多かったが、それがこの流れ(展開)にピタリはまった。

 2着したマジックキャッスル(父ディープインパクト)も434キロの小柄な牝馬だが、テルツェットはもっと小柄で426キロ。小さな馬体重牝馬の1着、2着独占だった。タフな馬場のGI大阪杯を完勝したレイパパレも422キロだったが、雨でみんなが苦にするようなコンディションは、「小柄な馬の方が自身にかかる負担が小さいぶん、逆に有利になるケースがある」というレースは、たしかに再三再四ある。

 母ラッドルチェンドは、リアルスティール(父ディープインパクト)、ラヴズオンリーユー(父ディープインパクト)全兄妹などの半姉になる持ち込み馬。ディープインパクトときわめて相性の良い牝系であり、その強みがどんどん前面に出てきた。

 1600mのダービー卿CTも時計以上に強かったが、少しタイムのかかった1800mをこなしたのは大きな自信になる。これなら2000m級も大丈夫と思えるので、秋のビッグレースでも侮れない馬になった。

 1番人気のマジックキャッスルは、クビだけ差されたとはいえ、春のヴィクトリアマイル3着の実力は十分に発揮した。直線、内から馬場を苦にしないフェアリーポルカ(父ルーラーシップ)が手応え十分に先頭に立ったため、雨で切れ味に影響される馬場を読んで、いつものレースよりスパートが早かったかもしれない。だが、4着フェアリーポルカとは「クビ、クビ」差。最後に鈍った印象はあるが、スパートが早かったわけではなかった。評価落ちはなく、テルツェットとともに牝馬の秋のビッグレースの有力馬は変わらない。

 同じ国枝厩舎の2番人気馬ドナアトラエンテ(ジェンティルドンナの全妹)は、直前の雨を考えたか、思われたよりずっと積極策に出た。それが予想以上に厳しい展開の導火線になったのが誤算か。これほど負ける力関係ではなく、秋の東京で見直したい。

 逃げると思われた伏兵サトノセシル(父Frankelフランケル)は、他馬が行く構えを示したため控えて進む展開。これまで追い込んでの好走はなく、突っ込んできたのにはびっくり。身体つきなど大きく変わった印象はなかったが、鞍上の好判断と、父母ともに欧州タイプの馬に少し渋った洋芝が合っていたのだろう。5歳馬ながらまだ【3-3-1-3】。格上挑戦(別定)でこの相手に小差3着なら、このあとが楽しみになった。

 5歳フェアリーポルカは、こういう少し時計のかかるコンディションこそベスト。インで早めに動きながらバテなかった。3歳時は470キロ前後だった馬体がいまは510キロ。

 タフなフェアリードールの一族(トゥザヴィクトリーなど)。条件さえそろえば、重賞3勝目が期待できる。

 シゲルピンクダイヤ(父ダイワメジャー)は、揉まれない外枠有利と思われたが、「右回りが久しぶりだったためか、内にささってしまった(和田竜二騎手)」。そのためだろう、直線スムーズに追えなかった。

 5番人気のイカット(父ディープインパクト)は、コースロスなく内を回って伸びかけたが、直線で狭くなってしまった。7着でもレースの中身は着順ほど悪くない。

 近年の牝馬は出走レースを絞ってスケジュールを組むので、クイーンSはGIヴィクトリアマイル組が有力とされるが、今年も1着、2着。傾向がストレートに当てはまり、これでこの10年、馬券に絡んだ30頭のうち12頭の前走が、春5月のヴィクトリアマイルとなった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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